ちょっと大人のモノクロ絵本

カミナリなんて怖くない!」「散歩が10倍楽しくなる絵本」に続き、3回連続でお届けしている、大宮西部図書館のみなさんをゲストに迎えてのブックトーク。ラストとなる今回は「ちょっと大人のモノクロ絵本」がテーマ。心のキャンバスに自由に色を描くことができるのは、白と黒を中心とした色のない世界ならではの魅力です。親子で想像力の翼を広げながら、アート感覚で楽しみたいちょっと大人のモノクロ絵本をご紹介します。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立大宮西部図書館
児童・地域係 T山さん

司書歴23年。1920年代挿絵黄金期の絵本を中心としたアーティスティックな絵本を好み、音楽・芸術・文学への造詣が深い。その独自のセンスを発揮したユニークな絵本選びには、スタッフ間でも定評がある。

さいたま市立大宮西部図書館
児童・地域係 O田さん

司書歴19年。穏やかな物腰と渋いバリトンボイスが魅力で、おはなし会で時おり披露する“わらべうた”は、お母さんたちのハートをつかむこと間違いなし!ダンディな見た目に反し、ナンセンス絵本が大好きな一面も。

さいたま市立大宮西部図書館
児童・地域係 U川さん

司書歴9年。フィギュアスケートをこよなく愛し、読み聞かせの講師もこなす、おはなし会の人気者。子どもの心をつかむのが上手で、ある本の読み聞かせでは、お話にのめり込んだ子どもに群がられ埋もれたこともあるのだとか。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
ぼちぼちいこか あれこれたまご あれこれたまご
「かげ」
作・絵:スージー・リー
出版社:講談社(2010年)
価格:1,400円(税別)
「たいふうがくる」
作・絵:みやこし あきこ
出版社:BL出版(2009年)
価格:1,300円(税別)
「もりのおくのおちゃかいへ」
作・絵:みやこし あきこ
出版社:偕成社(2010年)
価格:1,200円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

大宮西部図書館のみなさんをお迎えしてのブックトーク。ラストとなる今回は「ちょっと大人のモノクロ絵本」をテーマにブックトークを繰り広げたいと思います。
絵本というと色鮮やかなイメージがあり、白と黒を中心とした絵本ってあまり見かけない気がするのですが。
絵本全体からみると(モノクロ絵本は)小数派ですしね。絵としての刺激が少ないため敬遠される方もいますが、逆に色数が少ないぶん構図や展開が凝っていたりして、子どもから大人まで楽しめる芸術性の高い作品が多いんですよ。
それに「色がない」ということは、心の中で自分の好きな色をつけることができる、ということでもあります。ですから、モノクロ絵本のようなシンプルな絵本の読み聞かせは、発想力や想像力を養ううえでとても良いといわれています。
言われてみれば、文章のない絵本はセリフやストーリーを自分で想像しますし、絵もそれと同じなんですね。モノクロで描かれたドラゴンなら、黒でも、青でも、ピンク色でも、好きな色で思い描ける。自由な発想のためには、色が邪魔なこともあるんですね。
これは今回どんなモノクロ絵本が登場するのか楽しみになってきました!
では、色数が少なく、文章もない、ということで、まずはこの本「かげ」をご紹介します。女の子がかげと遊んでいるうちに、かげの世界に入り込んでしまう、というお話です。使っているのは黒・白・黄の3色だけ。セリフもほとんどありません。
横長の本なのに縦に開くなんて、ちょっと変わってるでしょう?
開くとその理由がわかりますよ。
(本を開きながら)見開きで1つの絵になっているんですね。で、真ん中から上が光のある世界、下がかげの世界。進んでいくうちに、その境界線が曖昧になっていく展開がおもしろいですね。文字も最初と最後に「パチッ」とあるだけなのに、絵本の中からいろんな音が聞こえてくるようで、これは想像力を刺激されますね!

モノクロ絵本で私がおすすめしたいのは、これ「たいふうがくる」ですね。新刊で入ってきたときパッと目に入って、白と黒だけでここまで光の表現ができるのか!と驚いたのを覚えています。小学生の男の子から見た台風がくる前の不安や緊張が、モノクロのデッサンと大胆な構図で描かれ、まるで映画を観ているような印象的の作品です。
「ニッサン童話と絵本のグランプリ」の大賞作として一時期話題になったよね。上から見下ろす、とか下から見上げるとか、アングルやカット割が非常に映像的で、見開きごとにシーンがガラッと変わるダイナミックな展開は、子ども向けの絵本ではあまり見られないこともあり、どちらかというと大人に人気がありますね。
よく映画の回想シーンでモノクロの8ミリビデオが流れる、あの感じに近いかも。
風の音、空気の臭い、肌にまとわりつく湿った空気。子どもの頃に感じた、台風が来る直前の、あの胸がざわつくような感じがよみがえってきますね。
主人公の男の子は、海に行くはずだったのに台風のせいで行けなくなり、がっかりした気持ちで台風の夜を迎えます。この本は、台風が近づいてくる様子を現実に体験しているかいないかで、読んだ後の印象が全く違うと思います。特に、主人公のように台風で予定が流れてしまった経験があると、より一層共感できるでしょうね。
あと、基本は黒のデッサンで描かれているのですが、全部がモノクロというわけでなく、ある部分だけ色がついているんです。その使い方がものすごく上手い。
ずっとモノクロが続く中に、色がついた絵がパッと現れる。ページをめくった瞬間の解放感が、台風一過のそれとシンクロして・・・この感じなんといったらいいのか・・・。これはもう、ぜひその目で確かめていただきたいですね。

みやこしあきこさんの作品は、モノクロを活かした色の使い方が本当に上手なのですが、この「もりのおくのおちゃかいへ」では、赤がとても良いアクセントになっています。個人的には「たいふうがくる」よりこの作品の方が好きですね。
映画の幻想的なシーンでみかける、一か所だけ色がついたモノクロシーンみたいでしょう?最近だとビールのCMでもこの手法が使われましたよね。
ああ!あのプレミアムなアレか!(笑)。
まわりがモノクロだと、特別感が際立ちますからね。ほんのわずかな音でも静寂の中だと響き渡る、みたいな。表紙の絵1枚見ても、赤い帽子をかぶった主人公(キッコちゃん)の吐く息の音や雪を踏みしめる音が聞こえてくるようでしょう?
木の陰でひっそりと息をひそめる動物たちの“静”と、森を急ぐキッコちゃんの“動”。そのコントラストがなんとも素晴らしい!1枚の絵の中に、こんな風に“静と動”を閉じ込めることができるなんて、モノクロの絵本ってなんて奥が深いんでしょう!
今回のブックトークで、モノクロ絵本への印象がすいぶん変わりました。
それは良かった!今回ご紹介した絵本は日本の作品ばかりですが、外国のモノクロ絵本の中には「ジュマンジ」や「ザ・スーラ」のように映画化された作品もあります。
ぜひ今回ご紹介した絵本をきっかけに、奥深いモノクロ絵本の世界を楽しんでみてください。
今回セレクトしていただいた本
ぼちぼちいこか あれこれたまご あれこれたまご
「かげ」
作・絵:スージー・リー
出版社:講談社(2010年)
価格:1,400円(税別)
「たいふうがくる」
作・絵:みやこし あきこ
出版社:BL出版(2009年)
価格:1,300円(税別)
「もりのおくのおちゃかいへ」
作・絵:みやこし あきこ
出版社:偕成社(2010年)
価格:1,200円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます