クセになるかも!?シュールな絵本

前回に続き、岩槻図書館のT井さんとK子さんとともにお届けするブックトーク。今回は、大人も思わずハマる「シュールな絵本」がテーマ。「こんな絵本があったなんて!」と思わず声をあげてしまいそうな、ひとクセもふたクセもある選りすぐりの絵本を取り上げながら、ワイワイガヤガヤ、楽しいブックトークをお届けします。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立岩槻図書館
児童・地域係 T井さん

司書歴13年。6歳の女の子と3歳の男の子のママ。手遊びうたやわらべ歌が得意で、子どもたちをのせるのが上手く、岩槻図書館児童サービスの要的存在。絵もおはなしも“パンチ”のある作品の絵本が大好き。

さいたま市立岩槻図書館
児童・地域係 K子さん

司書歴22年。好きな絵本はナンセンス絵本。オールマイティーに仕事をこなし、何でも相談できる頼れる児童サービス係の元締め的存在。物知りでしっかり者のイメージに反して、おっちょこちょいな一面もある愛されキャラ。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
きゅうりさんあぶないよ ドングリ・ドングラ うえきばちです
「きゅうりさんあぶないよ」
作・絵:スズキ コージ
出版社:福音館書店(1998年)
価格:800円(税別)
「ドングリ・ドングラ」
作・絵:コマヤスカン
出版社:くもん出版(2015年)
価格:1,200円(税別)
「うえきばちです」
作・絵:川端 誠
出版社:BL出版(2007年)
価格:1,200円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

今回は「シュールな絵本」がテーマということでお話をうかがうわけですが、ナンセンスだったり、シュールだったり、こういういわゆる王道から外れた絵本って、クセになる不思議な魅力がありますよね。この「きゅうりさんあぶないよ」も、表紙からして怪しい匂いがプンプンします(笑)
パンチが効いてますよね(笑)。主人公が“きゅうり”ってだけでもシュールなのに、出会う動物たちからもらった武器やら防具?やらで、ページを追うごとに“変さ”がレベルアップしていくという展開。Mさんの言う通り、まさにクセになる絵本です。
きゅうりがズンズン歩いていくと、いろんな動物が出てきて「きゅうりさん、そっちはねずみがでるからあぶないよ」と言いながら、帽子や角を渡してきます。それを装備する“きゅうりさん”はどんどんおかしな姿になっていくんですが、ねずみが出るとなぜあぶないのか、については放ったらかしのまま話が進んでいくんです(笑)
ストーリー性よりもインパクト重視の展開、いいですねぇ(笑)。
出てくるセリフはずっと同じというのも、きゅうりの“装備”によってエスカレートしていく変さ(奇抜さ)を際立たせていますね。絵も個性的で、独特の世界観を感じさせます。
そういえば、16、17年前、講演イベントか何かで、作者のスズキコージさんをお招きしたことがあるんですよ。
ええっ。ここ岩槻図書館にいらしたことがあるんですか!
どんな方なんだろう。やっぱり作風のような不思議な感じの方でしたか?
ええ、まさに描かれている絵同様、不思議な世界感をまとった方でした(笑)。
着ていらっしゃった服もスーツではなくイメージ通りのお洋服で、会場の装飾用の布や音楽も持参されて。絵の世界そのままの不思議な印象がとても強かったのを、今もはっきりと覚えています。
あははは。やっぱり、そのままなんだ!(笑)
それにしても、身近な図書館で、絵本作家の方から直接お話が聞ける機会があるなんて知らなかったので驚きです。スズキコージさん、私もお会いしてみたかったなぁ。
さいたま市の図書館では、絵本作家の方をはじめいろいろな方を講師にお招きした講演会をいろいろ企画しています。事前にお申込みが必要なものもありますが、各図書館のイベント情報は図書館ホームページに掲載していますのでぜひチェックしてみてくださいね。

ええと、次の絵本は「ドングリ・ドングラ」。さっきはきゅうりで、今度はドングリときましたか。(笑)
ドングリの頭に人間の体をしたキャラクターとは、これもまた独特な世界観を感じさせますね。
2015年に発行された、わりと最近の絵本なのですが、図書館員の間でも「これは面白い!」と話題になった絵本です。
遠くの島の火山が噴火して、それを見た隣の島のドングリたちが「よし!あの島まで行くぞ!」と隊列を組み、噴火した山に旅立つ、というお話です。
ゾロゾロと旅団を組んで隣の島へ向かう途中、彼らは様々なアクシデントに見舞われます。擬人化されていますが、そこはやはりドングリなので、リスに襲われたり、雪山で遭難したり、気が緩んで途中で芽が出ちゃったり、といろいろあるわけです。
気が緩むと芽が出ちゃうっていう発想がいいですね。(笑)
しかしなんかこう、ドングリなのにハリウッド映画のようなスペクタクル感がありますね。
ドングリスペクタクル(笑)。バカバカしいようで、でも真剣でドラマチック。
書きこみが細かいですよね。ご本人によるあとがきによると、スターウォーズに感化されイラストを描き始めたそうで、集団なのにドングリ一人ひとり(?)の衣装や体型も個性豊かに描かれ、まるで映画のワンシーンを見ているよう。中にはどこかで見たキャラクターを彷彿とさせるものもいて、思わずクスっとなるのも楽しいですよね。
ああ、なるほど、言われてみると構図もハリウッド映画っぽいですね。よく見ると、賢者っぽいドングリや戦士っぽいドングリがいたり、衣装も凝ってますね。
しかも、ドングリ一体一体に名前がついていて、作者が愛情をもって楽しみながら描いているのが伝わってきます。

では最後に「きゅうりさんあぶないよ」に対抗できるシュールな絵本、ということで私がご紹介するのはコチラ「うえきばちです」です。何度か学校訪問でも読んでいますが、とにかくインパクトがあって、表紙の絵とタイトル内容を想像すると、ほぼ100%裏切られます。
ネタバレになってしまうので、くわしい内容はここでは話せませんが、“うえきばち”に植えるものが、まず普通じゃない。特にストーリー性があるわけでなく、単なる観察日記のように淡々と進む展開なのですが、そのあまりの“ありえなさ”に子どもたちから「えええーっ!」と声があがります。
普通じゃないもの、ありえないもの。一体何を植えたのか気になりますねぇ。
(ページをめくりながら)「ええええええっー!これは確かにありえない!」(笑)
しかもこの字が手書き風で、呪われそうで、そこはかなく漂うホラー感。読み聞かせで子どもたち怖がりませんか?
確かに不気味でシュールですが、設定があまりにありえないので逆に笑いが出ますね。本当はちょっと怖いのかもしれませんけど(笑)。終わり方がまた想像を掻き立てる終わり方なので、最後にも「えーっ!」と声があがります。
ただ、このシュールな笑いと言葉遊びの絶妙な加減は低学年ではわかりづらいようで、小学校での読み聞かせでは4・5・6年生の方が反応は良いですね。
うえきばちです」ってタイトルから、どんな花が咲くかと思えばこんな花が(笑)。 表紙と中身のギャップがとにかく凄いですよね。
いやーしかし、こういうのアリなんですね。絵本って奥が深いなぁ。(しみじみ)
今回ご紹介した絵本は、いずれも一度読んだら忘れられない、インパクトのある個性的な作品ばかり。好き嫌いの別れる絵本ではありますが、たまにはちょっと変わったこんな本を読んでみるのはいかがでしょうか?
いつもと違った子どもたちの反応が見られるかもしれませんよ。
今回セレクトしていただいた本
きゅうりさんあぶないよ ドングリ・ドングラ うえきばちです
「きゅうりさんあぶないよ」
作・絵:スズキ コージ
出版社:福音館書店(1998年)
価格:800円(税別)
「ドングリ・ドングラ」
作・絵:コマヤスカン
出版社:くもん出版(2015年)
価格:1,200円(税別)
「うえきばちです」
作・絵:川端 誠
出版社:BL出版(2007年)
価格:1,200円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます