寒い日に読みたい科学絵本

凍えるような寒さの下だからこそ見られる、不思議な現象や美しい景色。冬将軍が猛威を振るう厳しい冬の寒さは、自然の中に私たちが思いもよらないアートを創り出してくれます。そこで今回のテーマは、「寒い日に読みたい科学絵本」。以前にもご登場いただいた、北浦和図書館のY崎さんとY丸さんを再びゲストに、寒い日も好きになれるような、冬の魅力がいっぱいつまった科学絵本をご紹介します。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立北浦和図書館
児童・地域係 Y崎さん

司書歴17年。アートに明るく自身も油絵を描くほか、ガーデニングやミシンでの小物づくりなど趣味も多彩な、6歳の女の子のママ。自らの子育て経験をふまえた的確な読み聞かせアドバイスは、わかりやすいと好評。

さいたま市立北浦和図書館
児童・地域係 Y丸さん

司書歴2年。ピアノが得意で音感が良く、わらべ歌が上手。おはなし会の常連ママから大人気を誇る、おはなしのお兄さん。虫や動物を至近距離や変わった角度から撮ったダイナミックな写真を使った写真絵本が大好き。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
ゆげ(かがくのとも特製版) おかしなゆきふしぎなこおり 雪の上のなぞのあしあと
「ゆげ(かがくのとも特製版)」
(かがくのとも 1979年12月号)

文:大沼鉄郎
写真:小川 忠博
出版社:福音館書店(1984年)
価格:品切れ
「おかしなゆきふしぎなこおり」
文・写真:片平 孝
出版社:ポプラ社(2012年)
価格:1,200円(税別)
「雪の上のなぞのあしあと」
作・絵:あべ 弘士
出版社:福音館書店(1997年)
価格:900円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

今回は、「寒い日に読みたい科学絵本」をテーマに、北浦和図書館のY崎さんとY丸さんを再びゲストにお迎えして、冬の魅力がいっぱいつまった科学絵本をご紹介いただきたいと思います。まず最初はこちらの絵本、「ゆげ」ですが、これはまたなんというか、懐かしい「昭和」なイメージの写真ですねぇ。
30年以上前の写真のせいか、ちょっと古くて暗いイメージで、表紙を見て「借りよう!」という気には、正直なかなかなりませんよね。でも、科学絵本の講習会で講師の方に紹介され、この暗さがあってこそ、普段あまり意識しない「ゆげ」の存在を捉えることができる、ということに気づいてからは、見方が変わりました。
確かに。カラー写真だと人に目がいってしまいがちですが、この本の主役は「ゆげ」なんですよね。あ、この冷蔵庫、懐かしいなぁ。そうそう、昔は冷凍庫が上で、開けると冷気がふわーっと降ってきて。でも今は「冷凍庫は下」がほとんどですし、家の中も昔と比べてずいぶん温かくなって、こんな風に部屋で湯気を見る機会って少なくなりましたね。
この本がペーパーバックで初めて発行されたのは1979年。当時と今とで生活も大きく変わっていますから、今の子がどういう反応をするのか、ちょっと想像できなかったですね。ですから、定評のある科学絵本ということで、館内での読み聞かせイベントで取り上げることになった時は、期待半分不安半分という感じでした。
で、実際読んでみての反応はどうでしたか?
読み聞かせの場では、それほど大きな反応はなかったんですが、後日、イベントに参加したお母さんが来館されまして、「この前イベントで読んでいただいた本、ありますか?」というのでお話を聞くと、あの日の夜、お風呂で「ゆげ」のことを思い出したらしく、楽しそうにずっと湯気で遊んでいたのだそうです。
いつも見ているこのお風呂のモヤモヤしたものが、昼間読んだ絵本に出ているものと同じだ、ということに気づいたんですね。子どもにとって、絵本にでているものが「わかる」というのは、ものすごく大きな喜びなんです。
ヘレンケラーでいうところの「Water!」だ!点と点が繋がって線になる喜びですね。 湯気の正体は水蒸気。いつもそこにあるのに、温度によって、消えたり現れたり。見えるのに、触ることはできない。考えてみると、「ゆげ」ってまるで魔法のような、不思議な現象ですよね。

身近なものから、なかなか見られない珍しいものまで、様々な自然の不思議に出会えるのが科学絵本の魅力ですよね。寒い日に読みたい、ということで私がオススメするのは「おかしなゆきふしぎなこおり」です。雪や氷が創り出す、アートのような不思議な光景にはただただ圧倒されるばかり。自然ってスゴイ!と思わせる1冊です。
偶然が重なりあってできた自然の形は、ひとつとして同じものはなく、撮ろうと思っても撮れるものじゃない。そう考えると、もちろん運もあるでしょうけれど、これだけの写真を撮影するのには大変だったでしょうね。
もう表紙の写真からして、「えーっ!」ですからね。 氷ついた滝、モンスターのような樹氷、すべて合成なしのリアルな写真は力強く見る者の心をひきつけます。さすがにここまでの雪となると、雪国にでも行かない限り難しいでしょうが、いつか自分の目で見てみたい、そんな気持ちになりますね。
おかしなゆきふしぎなこおり」には、そういったダイナミックなものだけでなく、つららや霜柱、雪の結晶のように、雪国でなくても、自分の目で見られるものも紹介されています。雪の結晶の中には虫メガネで見られるものもある、といいますし、この本をきっかけに、家の近所で身近な冬の不思議を探してみるのもいいですね。

写真の科学絵本が続いたので、最後は絵とお話の作品「雪の上のなぞのあしあと」をご紹介します。動物園の飼育係の“ぼく”が、雪の上に不思議な足跡を見つけるのですが、これがケモノでもない、鳥でもない、今までに見たことのない大きな足跡で・・・という、ミステリー仕立ての科学絵本です。
作者のあべ弘士さんは、25年間、旭川市旭山動物園に飼育係として働いていた方なんです。その経験を活かして描かれたこの作品は、普段見ることのできない「夜の動物園」の様子もわかります。小学校の国語で「動物園の獣医」という単元があるのですが、その授業に使いたいということで、市内の学校に貸出したこともある絵本です。
旭山動物園!じゃあ、雪国の動物園って本当にこんな感じなんですね。 「雪の上のなぞのあしあと」というタイトルから、雪の上に残ったいろんな動物の足跡を当てよう、みたいなほのぼのとしたお話かと思っていましたが、舞台が動物園となると話は別。動物園の園内に見慣れない謎の足跡があるって、大事件ですよね。
あしあとを見つけたのが午後9時30分。見知らぬ動物が入り込んでも、動物が脱走しても、動物園にとっては一大事。そこで飼育員の“ぼく”は、真っ暗で静まり返った夜の動物たちを見回るわけです。
足跡が何かを解明するために、小屋の中で本を調べたり、仲間に電話して相談したり、いろいろ想像して推理する場面があるのですが、読み聞かせの時はここで一緒にお子さんと推理してみると楽しいと思います。初めて読んだ時、私も想像して推理してみました。残念ながら予想は外れてしまいましたが(笑)
さて気になる「なぞのあしあと」の正体ですが、ここから先はネタバレになってしまいますので、今回のブックトークはこの辺りで。動物園の飼育員さんを悩ませた謎の正体は一体何だったのか。ぜひ絵本を手に取って、お子さんと一緒に考えてみてくださいね。
今回セレクトしていただいた本
ゆげ(かがくのとも特製版) おかしなゆきふしぎなこおり 雪の上のなぞのあしあと
「ゆげ(かがくのとも特製版)」
(かがくのとも 1979年12月号)

文:大沼鉄郎
写真:小川 忠博
出版社:福音館書店(1984年)
価格:品切れ
「おかしなゆきふしぎなこおり」
文・写真:片平 孝
出版社:ポプラ社(2012年)
価格:1,200円(税別)
「雪の上のなぞのあしあと」
作・絵:あべ 弘士
出版社:福音館書店(1997年)
価格:900円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます


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