日本語っていいな、楽しいな

例え意味がわからなくても、美しい響きの言葉やリズムのある文に触れることは、子どもの感性を育てるうえでとても大切なことなのだとか。そこで今回は「日本語っていいな、楽しいな」をテーマに、「大和言葉」と呼ばれる日本古来の言葉を中心に言葉の響きやリズムが楽しめる絵本について、大宮図書館のO倉さんとA井さんにお話をうかがいました。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立大宮図書館
児童・地域係 O倉さん

司書歴6年、児童・地域係の頼れるリーダー。趣味は植物を愛でること。また花を生けるのも好きで、その持前のセンスを発揮し、季節に応じたさりげないディスプレイや看板づくりもO倉さんが手掛けることが多いのだとか。

さいたま市立大宮図書館
児童・地域係 A井さん

司書歴7年。やわらかな物腰と笑顔が印象的な好青年の見た目とは裏腹に、ついいろんなことに口を出してしまう小姑的な一面も。神社・博物館めぐりが趣味で雅楽を愛するなどセンスも渋く、隠れた一面が何かと多い異色の存在。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
たかこ どうぶつ どどいつ たまのりひめ
「たかこ」
作:清水 真裕
絵:青山 友美
出版社:童心社(2011年)
価格:1,300円(税別)
「どうぶつ どどいつ」
作:織田 道代
絵:長 新太
出版社:のら書店(2003年)
価格:1,300円(税別)
「たまのりひめ」
(こどものとも年少版)

作・絵:牡丹 靖佳
出版社:福音館書店(2006年)
価格:362円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

グローバル化を背景に英語教育が注目されていますが、古くからある日本の伝統や日本語の美しさを大切にする心を育てるのも、国際人を育てるうえで大切なことですよね。そこで今回は「日本」をテーマに、大宮図書館のO倉さんとA井さんにおすすめの絵本をご紹介いただきたいと思います。
テーマは「日本」ですか。さすがにそれはざっくりすぎるので、もう少しポイントを絞りましょうか。では、子どもにとって絵本は「言葉」と出会う場所ということで、今回は古くからある日本語「大和言葉(やまとことば)」などを中心に、日本語の豊かな表現に慣れ親しめる本を取り上げていきましょう。
「大和言葉」は、雅語や和歌の言葉を指すこともあるようですので、私からは、雅語が登場するこちらの絵本「たかこ」をご紹介します。主人公の男の子の小学校にやってきた転校生「たかこ」。十二単を身にまとい雅な言葉を話す彼女は、何から何まで平安時代のお姫様そのもので・・・・という奇想天外なお話です。
その転校生が、この表紙の下ぶくれの女の子というわけですね。平安時代のお姫様が転校してきて隣の席になったら・・・なんて発想、なかったなぁ。これは斬新!でも彼女が話す「いと はづかし」とか「こころやすくならむ」のような雅語って、初めて耳にする子どもたちがほとんどだと思うのですが、それでも楽しめるものなんですか?
まあ多少はとまどうかもしれませんが、絵にインパクトがありお話の展開がおもしろいので、“自分の知らない言葉を話す不思議な転校生のお話”として十分楽しめると思いますよ。子どもは順応力が高いですからね。
なるほど。十二単で登校し、筆と墨でノートをとり、音楽の時間に琵琶をひく転校生の女の子なんて、そうそういませんもんね。その謎とインパクトに比べたら、雅語がわからないことくらい、子どもにはとるに足らないことなのかも(笑)。
言葉の意味がわからなくても、たかこのしぐさや振る舞いから「なんとなくこんな感じのことかな」程度には伝わるので、言葉の意味を聞かれたら、古典の記憶をたどって親が教えてあげても良いですし、「昔(平安時代)の人はこんな言葉を話していたのよ。」程度のフォローでも十分だと思いますよ。
もしお子さんが雅語に興味を持つようだったら、百人一首に挑戦してみるのもいいかもしれませんね。絵札には「たかこ」と同じ十二単のお姫さまがたくさん出てきますから、古典に親しみを持つ良いきっかけになるのではないでしょうか。
百人一首といえば “5・7・5・7・7”の和歌ですが、5文字や7文字のリズムって日本人が心地よく感じるリズムなのだそうです。短歌や俳句に限らず、キャッチコピーやモノの名前などに5文字や7文字が多いのは、そのせいなのだとか。

では、ちょうど和歌のリズムのお話が出たので、私からはちょっと変わったリズムの言葉遊びの絵本「どうぶつどどいつ」をご紹介します。川柳や俳句で“5・7・5”はよく耳にしますが、これは都都逸(どどいつ)といって“7・7・7・5”のリズムなんです。
明治初期の文明開化期を象徴する文句として有名な、「ざんぎり頭を叩いてみれば 文明開化の音がする」なんかは、都都逸(どどいつ)の代表ですよね。登場したのは江戸末期頃で、寄席やお座敷で三味線と一緒に歌われていたそうです。
あ、あと、笑点の大喜利にも登場しますよね。「●●を使って都都逸(どどいつ)を作ってください」っていう、アレです(笑)。
そうそう。笑点のアレも言葉遊びですよね。大宮図書館では月替わりでいろんなテーマを決め、そのテーマに合った本を展示していまして、以前「たのしいことば」というテーマの時に言葉遊びが楽しめる絵本として選んだのが、この「どうぶつどどいつ」だったんですよ。
タイトルの通り、“7・7・7・5”の軽妙な都都逸(どどいつ)のリズムにのって、いろんな動物たちが登場する言葉遊びの絵本です。インパクトのある長新太さんのイラストとユニークな都都逸(どどいつ)の言葉のリズムがぴったり合っていますよね。
「あしかのあみもの あかあおであむ あくびあーあで またあした」 (あしかの編み物 赤青で編む あくびあーあで また明日)。 わぁ、声に出すとスルッと流れる感じで、すっごく読みやすいです!やっぱり日本人って、5文字や7文字のリズムが無意識のうちに体に染み込んでいるんだなぁ。

では最後に私からおすすめするのは、こちらの「たまのりひめ」です。これまでの2冊のような大和言葉ではないのですが、日本語の持つ繊細さ優雅さが感じられる絵本ということで選びました。
一般的に絵本にはいろいろなオノマトペ(擬音語や擬態語などのこと)が使われていますが、「たまのりひめ」では画家で現代芸術家の牡丹靖佳さんが描く幻想的なイラストに合った、響きの美しいオノマトペが“5・7”のリズムにのせて登場し、とても詩的で不思議な世界観を醸し出しています。
たまのりひめが歩くさまは「しずしず」でなく「しゃなりしゃなり」、舞い散る花は「ひらひら」でなく「ほろほろ」のように、より優雅な言葉が選ばれていますね。こういう微妙なニュアンスの違いを表現できるのも、日本の言葉が繊細で豊かだからこそ。この絵本は、そうした日本語の持つ魅力に改めて気づかせてくれますね。
ちょっとシュールな世界のお話ですが、現代芸術家らしい遊び心が感じられる絵本です。最後に「アレッ?」というしかけもありますので、摩訶不思議な「タマノーリ王国」の世界を親子で楽しんで欲しいですね。
冒頭でもお話しましたが、子どもにとって絵本は「ことば」と出会う場所。今回ご紹介した作品に限らず、図書館には古今東西、日本のさまざまな言葉でつづられた絵本がたくさんありますので、ぜひいろんな絵本を通じて日本語の魅力に触れていただければと思います。
Eテレの「にほんごであそぼ」もそうですが、大人が難しいと思う古典や伝統芸能も、好奇心を刺激することで何の抵抗なく受け入れられる、子どものやわらかい感性にはただ驚くばかり。次回のブックトークでは、引き続き大宮図書館のお二人と一緒に「日本」をテーマにユニークな絵本をご紹介します。
今回セレクトしていただいた本
たかこ どうぶつ どどいつ たまのりひめ
「たかこ」
作:清水 真裕
絵:青山 友美
出版社:童心社(2011年)
価格:1,300円(税別)
「どうぶつ どどいつ」
作:織田 道代
絵:長 新太
出版社:のら書店(2003年)
価格:1,300円(税別)
「たまのりひめ」
(こどものとも年少版)

作・絵:牡丹 靖佳
出版社:福音館書店(2006年)
価格:362円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます


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