常識の枠を飛び出せ!上

子どもに読み聞かせする絵本は、教育に良さそうな評判のいい作品を選びがち。でもたまにはちょっと冒険したい気分の時もありますよね。そんな時にぴったりの、毎日の読み聞かせが新鮮なものになる、奇想天外な絵本をご紹介します。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立東浦和図書館
児童・地域係 H杉さん

司書歴8年。人生経験豊富で、いつも楽しいお話で職場の雰囲気を盛り上げてくれる、東浦和図書館のムードメーカー的存在。今回紹介するような、読み出すやいなや笑えてしまう、奇想天外なおはなしと絵にあふれた絵本が大好き。

さいたま市立東浦和図書館
児童・地域係 F田さん

司書歴21年、児童サービス係では7年目を迎える、本選びのスペシャリスト。お昼寝が趣味でほんわかした印象とは裏腹に、やると決めたことは必ずやり遂げる熱い一面を持つ、妥協なき司書魂の塊。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
「バナナじけん」
作・絵:高畠 那生
出版社:BL出版(2012年)
価格:1,300円(税別)
「あし にょきにょき」
作・絵:深見 春夫
出版社:岩崎書店(1980年)
価格:1,100円(税別)
「ひげひげ わたりひげ」
作・絵:酒巻恵
出版社:あかね書房 (2017年) 価格:1,300円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

大人の目線で絵本を選ぶと、お話のしっかりした、いわゆる「アク」や「クセ」のない絵本を選んでしまいがち。そこで今回は、東浦和図書館からH杉さんとF田さんをゲストに迎え、そんな大人が持つ絵本のイメージをひっくり返す、奇想天外な絵本をご紹介いただきたいと思います。
奇想天外、ですか。つまり、自由で「なんでもあり」な絵本ということですね。 ならばこちらの「バナナじけん」なんてどうでしょう。 斬新な着想、予想のつかない展開。まさに今回のテーマにぴったりの一冊です。
事件!?いったい何が起こるんですか?
事件の発端は、トラックが道の真ん中に落とした一本のバナナ。それをさるが見つけて食べてしまう。と、ここまではお約束のパターンですが、この絵本では、登場人物がうさぎ、ワニとどんどん続いていくんです。
そこから先は絵もお話も「ありえない!」の連続。中学生になるうちの息子も、うさぎに「ありえない!」とつっこんでいました(笑)。
以前、こちら(パパと読み聞かせを楽しもう<後編>)で取り上げた長新太さんの作品もそうですが、子どもってこういうナンセンスで奇想天外な絵本が大好きですよね。親が選んだ教育的な絵本とは反応が大違い!
読み聞かせでも、常識の枠を越えた「ありえない」の数々を、子ども自身が想像力を膨らませて聞いている、そんな印象を受けました。こういう奇想天外なものとの出会いが、子ども自身のクリエイティブな発想力の芽生えにつながっていくのかもしれませんね。
読み聞かせをすると、子どもたちがなんとなくニヤニヤしながら聞いていて、楽しんでいるのが伝わってきます。 読んでいるこっちも嬉しくなっちゃいますね。

次はちょっとダークでシュールな、この「あし にょきにょき」はどうでしょう。
毎日美味しいものばかり食べているグルメのポコおじさんのもとに、怪しいセールスマンが大きなそら豆を売りに来るお話なんですが……。
某黒いセールスマンを思わせるルックスが、大人向けのブラックユーモアに出てきそうな不気味さ。大好きです!(笑)
こんな怪しい人から買って食べるなよ、と普通は思いますよねえ(笑)。案の定、そら豆を食べたせいで、足がにょきにょき伸びていってしまうんです。
すごくインパクトがありますね!この最後のページなんて、夢に出てきそう。
初版は1980年。40年近くロングセラー絵本として愛され続けているのは、それだけ多くの人の心に残っているということかもしれませんね。ちなみに、2015年に「あしにょきにょきにょき」というタイトルの続編も出ているんですよ。
これですね。うーん、なんだか洗練された反面、毒が抜けてあっさりとした印象ですね。
ええ。前作の怪しさ、ちょっぴりダークな感じがなくなって、絵も内容もかわいらしく安心感のある絵本になっています。
でも、やっぱり私は前のほうが好きだなあ。怪しさや不安はマイナス要素と捉えられがちですが、優等生すぎると逆に印象に残らない。物語の重要なスパイスとして、あってもいいんじゃないかなあと思います。
日常を描いたほのぼのとしたホームドラマでも、ちょっとした波風があるからこそ面白いですもんね。
そういえば以前、このブックトークでも(パパと読み聞かせを楽しもう<後編>)、「読み聞かせで一番大切なことは感情を揺さぶることだ」という話が出たのを思い出しました。考えてみると、怪しさや不安も、心を動かす大事なスパイスなんですね。

では、私からもお気に入りの一冊を。これです!「ひげひげ わたりひげ」。
わたり…“ひげ”?思わずタイトルを二度見しちゃいました(笑)。
「わたりどり」ならぬ「わたり”ひげ”」。ああ、なるほど!“ひげ”は生物なんだ!
そう。そして、この絵本の世界では「“ひげ”は毎年飛んでくるもの」なんです。
この絵本を楽しむにはまず、世界観を受け入れるところから始まるわけですが、たくさんの種類の“ひげ”が科学絵本みたいに紹介されていて、読んだときにツボに入って大爆笑しちゃいました。
こんなにたくさんいるんだ!しかも、生まれたての“ひげ”もいるし、希少種の“ひげ”の面白さといったら。読んでいくうちに、“ひげ”LOVEな気持ちがわいてきちゃいました!
よく見るといろんなパロディーがちりばめられていて、すみずみまで楽しめるので、大勢の前で読むよりも、おうち向きの絵本だと言えそうです。「このひげが好き」「こんなひげがあったらいいね」なんて、親子で会話を広げていくのも楽しいですよね。
読んだ後に、自分オリジナルのひげを考えることもできますね。「この“ひげ”はこういう特徴で、生息地はどこで…」って。
この絵本の“ひげ”は生きものなので、性別があり、子孫も残します。蛇に食べられてしまう“ひげ”もいて、食う・食われるの弱肉強食の世界をたくましく生きているんです。 忘れた頃に読み返すとすごく面白くて、涙が出るほど笑ってしまいます。
なかには「こんな設定ありえない!けしからん!」と思う方もいるかもしれません。でも、そこは割り切って「こういうのもアリ!」と、子どもと一緒に楽しんでしまったほうが、のびのびと、自由な個性が育つ、そんな気がします。
確かに、大人になればなるほど、常識に囚われがち。「かもしれない」という可能性や、「こういうのもありなんだ」と受け入れる柔軟性を持って、子どもに接していきたいですよね。
奇想天外な絵本のお話はまだまだ続きますが、今回はひとまずこのあたりで。「常識の枠を飛び出せ!」の後編となる次回は、更にパワーアップしたブックトークをお届けします。どうぞお楽しみに!
今回セレクトしていただいた本
「バナナじけん」
作・絵:高畠 那生
出版社:BL出版(2012年)
価格:1,300円(税別)
「あし にょきにょき」
作・絵:深見 春夫
出版社:岩崎書店(1980年)
価格:1,100円(税別)
「ひげひげ わたりひげ」
作・絵:酒巻恵
出版社:あかね書房 (2017年) 価格:1,300円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます


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