モノを大切にする心を教えたい

今回は、楽しみながら子どもと一緒に「モノを大切にする心」について考えよう、をテーマに、
さいたま市立桜図書館さんのお二人に絵本の楽しみ方についてお話をうかがいました。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立桜図書館
児童サービス係 Cさん

司書歴24年の本選びのスペシャリスト。おはなし会では数少ない男性語り手もこなす、頼れるリーダー。

さいたま市立桜図書館
児童サービス係 Hさん

司書歴10年。おはなし会や赤ちゃんへの読み聞かせイベントで活躍中のやさしいお姉さん的存在。

※役職・所属・プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
どうぐのおばけ ペレのあたらしいふく おじいさんならできる
「どうぐのおばけ」
作・絵:せな けいこ
出版社:童心社(1993年)
価格:900円(税別)
「ペレのあたらしいふく」
作・絵:エルサ・ベスコフ
訳:小野寺 百合子
出版社:福音館書店(1976年)
価格:1200円(税別)
「おじいさんならできる」
作・絵:フィービ・ギルマン
訳:芦田ルリ
出版社:福音館書店(1998年)
価格:1300円(税別)

※すべて図書館で借りることができます

さいたま市立中央図書館 児童係Sさん えー、ではまず、「どうぐのおばけ」からいってみましょう。
「どうぐ」で「おばけ」ということは・・・、あ、わかった!
「大事にしないと道具がオバケになって怒って出てくるよ~」という話でしょう!
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん ふっふっふ。残念、違います。
全く逆で、「どうぐを大事にしていたことで助かった」という話なんです。これは。
日本に昔からある「大事にされた道具は100年経つと妖怪になる」という、
つくもがみ信仰がベースなので、
道具がオバケになって出てはきますが、 全然怖くはないです。
むしろ、笑っちゃう子の方が多くて、昔から人気のある絵本ですね。
親子二代で読んでいる方も結構いますよ。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん あ、ホントだ。
読んでみると、ストーリーもオバケも、結構、ユルいというかヌケてるというか・・・。
表紙の絵から、てっきり怖い話かと思ったら、
意外にも脱力系なんですね(笑)
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん そうなんです。
竜とか、つくもがみ、とか出てくるわりに、怖さゼロでしょう(笑)
小さいうちは、「モノを大切に」という教訓がどうこういうよりは、
子どもの好きな楽しいお話がまずあって、
モチーフとして「どうぐ(モノ)」が出てくる、
というシンプルなお話の方が、印象に残りやすいと思います。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん 子どもって、ホント、こういう脈略のない展開のお話が好きだよね。

さいたま市立中央図書館 児童係Sさん では次はコレ、「ペレのあたらしいふく」。
あ~、いいですね。
この絵のタッチがなんか懐かしい感じ。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん いいでしょう。
コレ30年近く昔の絵本なんですが、
今だに名作として世界中で高く評価されている1冊です。
もう、本当に細かいところまで丁寧に描かれていて・・・・(うっとり)
主人公のペレが自分の世話をしている羊から、
新しい洋服を手に入れるまでの話なんですが、
お話を読み進めていくと、モノ(洋服)ができるまでに
どれだけたくさんの人の手がかかっているかがわかるんです。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん しかも、自分が刈った羊の毛をすいてもらう、
すいてもらった毛を紡いでもらう、という風に次の工程に進むごとに、
いろんな人にお願いをする度にペレはちゃんとお返しの労働をする。
つまり、「洋服ができるまでにどれだけたくさんの人たちの手がかかっているか」
ということと、「自分の力で洋服をつくりあげる大変さや充実感」の両方が、
この1冊につまっているんです。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん なるほど。
子どもと一緒に主人公ペレに気持ちを重ねながら、
「自分自身の身の周りのものが、
どれだけいろんな人たちの手がかかっているのか」、
また「それを買うために、お父さんやお母さんがどれだけ苦労したのか」
について話すことで、モノの大切さを考える良いきっかけになりますね。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん 羊の世話をしたり、毛を刈ったり、糸を染めたり。
人にお願いするばかりじゃなくて、
(洋服を作る工程の中で)ペレ自身ができることはちゃんと自分でやっている、
というのもいいですよね。
あと、自分でできない作業をお願いするときの絵をよくみると、
ほら、こうやって帽子を脱いで相手に敬意を払っているんです。
細かいでしょう。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん あ、ホントだ(笑)
最近、子ども自身に野菜づくり体験をさせる保育園や幼稚園も増えていますが、
そういう体験を思い出しながらペレの気持ちを想像してみると、
「苦労して手に入れた服を大切に思う」ペレの気持ちに、
より近づけるかもしれませんね。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん そうですね。
それができると、最後のページで、
ペレが子羊に言った言葉の重さが、きっと理解できると思います。

さいたま市立中央図書館 児童係Sさん 続いて3冊目は、「おじいさんならできる」。
あれ?これも洋服のお話ですか?
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん うーん、確かに洋服は登場しますが、
さっきの「ペレのあたらしいふく」とはちょっと切り口が違います。
ペレのあたらしいふく」が「モノを大切にする理由」について考える本
であるのに対し、この本はどちらかというと
「モノを大切にする知恵」や「モノを大切にするってこういうこと」がわかる本、
という方が近いかな。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん 物語は、おじいさんが、生まれたばかりの
孫のヨゼフのために作ったブランケットからはじまります。
ヨゼフの成長とともに、汚れて破れていくブランケット。
でも、大好きなおじいさんからもらったブランケットを捨てたくないヨゼフは、
おじいさんにお願いして違うものに作り替えてもらっていく・・・・
という話です。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん 大事な思い入れのあるものだからこそ、捨てられない。
捨てないために、新しいカタチにリメイクしていくという点では、
ペレのあたらしいふく」の続きといえるかもしれませんね。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん 一言でいってしまえば「もったいない」の精神なんですが、
ブランケットがジャケットになり、ジャケットがベストになり・・・と、
パターンで変化していくので、子どもも「次は何になるんだろう?」
とページをめくるのが楽しくなる絵本だと思います。
ラストもちょっとしたひねりがきいていますしね。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん そういえば、リメイクやリサイクルの原点は
「モノを大切にする」ことですもんね。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん あと、実は、本文中ではゴミになってしまうリメイクする度に出るハギレも、
ちゃんとリサイクルされているんですよ。
お話を読みながら、ぜひ絵の下の方にも注目してみてください。
さいたま市立中央図書館 児童係Sさん あ!ホントだ。
もうひとつの物語が続いているんですね。
なんか、スピンオフっていう感じ(笑)。
実際の本で確かめていただくためにも、
今回のお話はこの辺にしておきましょう(笑)
今回セレクトしていただいた本
どうぐのおばけ ペレのあたらしいふく おじいさんならできる
「どうぐのおばけ」
作・絵:せな けいこ
出版社:童心社(1993年)
価格:900円(税別)
「ペレのあたらしいふく」
作・絵:エルサ・ベスコフ
訳:小野寺 百合子
出版社:福音館書店(1976年)
価格:1200円(税別)
「おじいさんならできる」
作・絵:フィービ・ギルマン
訳:芦田ルリ
出版社:福音館書店(1998年)
価格:1300円(税別)

※すべて図書館で借りることができます