モノのきもちになってみよう

もし、○○が××だったら・・・?子どもは、そんなあり得ないことを考えるのが大好き。そこで今回のテーマは「モノのきもちになってみよう」。前回に続き、さいたま市立東浦和図書館と南浦和図書館から、子育て&読み聞かせ真っ最中のママ3人をゲストに、おはなし会で子どもたちに大ウケのユニークな絵本についてお話しいただきました。

今回のブックトークゲスト

さいたま市立南浦和図書館
児童サービス係 M川さん

司書歴12年、小学2年生の男の子のママ。しぐさや話し方が丁寧で、”しっかり者の文学少女”という印象。かわいらしい見た目に反して、マナーを守らない子はビシッと叱る一面も。ちょっぴりシュールで明るくユニークな絵本が好き。

さいたま市立南浦和図書館
児童サービス係 Y田さん

司書歴18年、3歳の女の子のママ。落ち着いた対応とやさしい物腰で、みんなに頼りにされている、児童サービス係の大ベテラン。サイドストーリーを想像させるような、細部まで緻密に描かれた絵本が大好き。

さいたま市立東浦和図書館
児童サービス係 S野さん

司書歴10年、4歳の男の子のママ。定番児童書の知識が豊富で、明るく元気なお話がピッタリ。「ぐるんぱのようちえん」や「トラのじゅうたんになりたかったトラ」のような、じっくり聞かせるおはなしの中にクスッと笑える絵本が大好き。

※役職・所属・プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
いちにちぶんぼうぐ おもちのきもち ちくわのわーさん
「いちにちぶんぼうぐ」
作:ふくべあきひろ
絵:かわしまななえ
出版社:PHP研究所(2010年)
価格:1,200円(税別)
「おもちのきもち」
作・絵:かがくい ひろし
出版社:講談社(2005年)
価格:1,500円(税別)
「ちくわのわーさん」
作・絵:岡田よしたか
出版社:ブロンズ新社(2011年)
価格:980円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

ミカンを指にさして「キャー食べないでぇ~」とか、ゴミ箱のフタをバコバコさせながら「ちゃんと捨てろ~」とか。モノになりきって喋ると、子どもってすごく喜びますよね。絵本にもそういう、人間でも動物でもない「モノ」になりきって楽しめる作品ってありますか?

ありますよ~。「今日1日、○○になってみよう!」と、男の子がアレコレ妄想する「いちにちシリーズ」なんか、ぴったりだと思います。
どのシリーズも面白いんですが、“モノ”ということであえて選ぶなら
いちにちぶんぼうぐ」がおすすめですね。

表紙の男の子が「ぶんぼうぐってかしこそうだな。よし、いちにちぶんぼうぐになってみよう!」って、自分が文房具になったところを想像していくんです。
クリップになったり、磁石になったり、ホッチキスになったり・・・

でも、どれも乱暴に扱われてヒドイ目に合うという(笑)。
見開きで「いちにち○○!」とどんどん変わっていくのですごくテンポが良くて、しかも「こんなひどい使い方はいけないね。大切しなくちゃね」みたいな教訓めいたところが全然ない。だからこそ、子どもも思い切りゲラゲラ笑えて心から楽しめるんでしょうね。

お笑い芸人のギャグみたいな面白さなんですね!
そもそも「文房具って賢そうだから、1日文房具になってみよう!」という発想自体が、バカバカしくていいです(笑)。それにしてもこの、「いちにちメジャー!」いいですねぇ。

面白いでしょう?本文だけでなく、見返しの部分にもしかけがあるので、ぜひそこも楽しんでくださいね。

えーと、次は「おもちのきもち」・・・かがくいひろしさん!
この方の絵本も子どもに人気がありますよね。うちの子も大好きです。

鏡餅なのでちょっと時期がズレちゃいますが、「お正月に家にあったあの“おもち”は、みんなが見ていないところで実はこんなことを考えていたんだねぇ」、みたいな感じで話すと楽しいと思いますよ。

いちにちぶんぼうぐ」と同じで、お正月においしく食べたおもちも、おもちからしたら、ちぎられたりたたかれたり、さんざんな目にあっていたんですね。それで「もう食べられるのは嫌だ!」って家出しちゃうんです。

あ、でも、だからといって悲壮感は全然ないんですよ。必死に走って逃げるうちに、デロンデロンに伸びちゃって、むしろ見ているとおもちが食べたくなるという(笑)

ああ~、わかります。かがくいさんの絵って、表情がのほほ~んとしていますもんね。しかも、あつあつの出来たての食べ物の絵がなんとも、食欲をそそるんですよね~。これは“おもち”を用意してから読んだ方がよさそうですね。

最後にご紹介するのは、私のお気に入り絵本「ちくわのわーさん」です。
主人公が食べ物という点ではさっきの「おもちのきもち」と同じなんですが、絵が一切擬人化されてなくて。そのシュールさにやられてしまいました(笑)

どのページをめくっても、“そのまんまのちくわ”がいる!
あああ、このページなんて、“そのまんまのちくわ”がすべり台滑ってるし(笑)。
なんてシュール!

散歩したり、お昼寝したり、しかも関西弁でしゃべるんですよ。
もうありえないことのオンパレード。すごい発想ですよね。

ホント、インパクトありますよねぇ(笑)。マツコデラックスさんの番組で紹介されたり、ネットでもかなり話題になったらしくて、いつも予約でいっぱいで、図書館でもなかなかお目にかかれない人気絵本なんです。

あれ?じゃあ、ここにあるのは?

実は、私物なんです。
あまりに気にいってしまい、とうとう買ってしまいました(笑)

コレを読むと、本物のちくわで「わーさんごっこ」したくなっちゃうんですよ。
「食べ物で遊んじゃダメー!」って怒る立場の親としては、
非常に悩ましいところです(笑)

すべり台はさすがにNGですが、食べる直前に遊ぶくらいは許容範囲ということで(笑) でも、そういう遊び心と絵本が結びつくことって大事ですよね。
大きくなっていつか親元から離れても、ちくわを見るたび、この絵本やそうやって遊んだことを思い出してくれるかもしれませんし(笑)。
今回とりあげた絵本はいずれもユーモアたっぷりの作品ばかり。
ぜひ親子で大笑いしながら楽しんでくださいね。

今回セレクトしていただいた本
いちにちぶんぼうぐ おもちのきもち ちくわのわーさん
「いちにちぶんぼうぐ」
作:ふくべあきひろ
絵:かわしまななえ
出版社:PHP研究所(2010年)
価格:1,200円(税別)
「おもちのきもち」
作・絵:かがくい ひろし
出版社:講談社(2005年)
価格:1,500円(税別)
「ちくわのわーさん」
作・絵:岡田よしたか
出版社:ブロンズ新社(2011年)
価格:980円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます