3世代で楽しむ絵本

今回から3回にわたってゲストとしてご登場いただくのは、さいたま市立図書館の読み聞かせイベントで人気の、テーブルパペット人形劇団「オン・サンタ」主宰の楽葉(らくよう)サンタさん。おじいちゃん世代を代表する、絵本と読み聞かせのスペシャリストをゲストに迎え、ふるさとに家族が集う「夏」にふさわしく、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、子ども、と3世代で楽しめる絵本をテーマに、楽しいブックトークをお届けします。

今回のブックトークゲスト

テーブルパペット人形劇団
「オン・サンタ」主催
楽葉(らくよう)サンタ さん

着ぐるみ児童劇団の人形・小道具担当から、公立図書館員に転身。児童サービス係を経て、中央図書館副館長を最後に、2009に定年を迎える。退職後は、おはなし会のゲストとして活躍するかたわら、身近な材料で作る“幼児が使えるパペット”づくりにも力を注ぐ。孫との人形遊びが一番の楽しみ、と語るおじいちゃん世代を代表する、絵本と読み聞かせのスペシャリスト。
★手づくり人形劇 テーブルパペット「劇団オン・サンタ」ホームページ
http://on-santa.com/

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
おふろやさん えんにち  
「おふろやさん」
作・絵:西村繁男
出版社:福音館書店(1983年)
価格:800円(税別)
「えんにち」
作・絵:五十嵐豊子
出版社:福音館書店(1977年)
価格:品切れ
 

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

今回から似顔絵イラストが変わり、ちょっぴり、リアルに近づいた編集部員Mです。
ちなみに、今回からご登場いただく楽葉さんのイラストは、ご本人にかなり似ているので「もしや、あの人かな?」とお気づきの方もいるかもしれませんね。
ところで、人形劇、素ばなし、読み聞かせと、(さいたま市立)図書館のおはなし会に欠かせない存在の楽葉さんですが、実はご自身も図書館の児童サービス係だったそうですね?
うん。とはいっても、児童サービス担当だったのは、もうかれこれ20年以上前の話だけれどね。
でも、一線を退いてもなお、いまだに図書館やおはなし会と関わっているっていうのは、やはりそれだけ絵本や人形劇(を通しての子どもとのふれあい)が魅了的だってことなんでしょうね。
そうだね。時代とともに変わっていくものが多いなかで、時代や世代を越えて親の絆を深めてくれる。それも絵本の大きな魅力だね。現役時代は半分仕事で息子や娘に読んでいたけれど、仕事を離れた今は、孫といっしょに心から絵本を楽しんでいるよ。
絵本は「世代を越えた絆づくりのためのツール」・・・奥が深いなぁ。
では、そんな「絵本と読み聞かせの達人」楽葉さんに、早速質問です!
親から子へ、子から孫へと受け継がれる絵本もステキですが、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、子どもと、1つの絵本を囲んでみんなが楽しめる、そんな絵本や読み聞かせのアイデアはありませんか?
うーん、3世代いっぺんに楽しむ絵本かぁ・・・・。こりゃまた難しいテーマを(笑)。
あ、そうだ。話がはずむきっかけになる絵本ということで、コレなんかどうかな?
やっぱり無茶ですかねぇ・・・・・。えっ!あるんですか!さすが達人!(笑)
まず最初の1冊目は「おふろやさん」ですか。わっ、懐かしい!子どもの頃、町内にありましたよ、こういう大きな銭湯。
(ページをめくりながら)そうそう!子どもは泳ぎますねぇ。そして怒られる、と(笑)
この本で文字が出てくるのは最初のページだけ。あとはずっと絵のみなんだけど、昭和の銭湯の様子が実に生き生きと描かれているから、見ているだけでも十分楽しい。壁の富士山はもちろん、広告の文字や手書きの注意書きなど、見れば見るほど味わい深いんだ。お客さんの腕や足の部分、よく見るとほら・・・
あっ!カギだ!これ下駄箱のカギでしょう!細かいなぁ!、どのお客さんも年齢や体型が違って、子どもたちはみんな日焼けしている。本当によく描かれてるなぁ。お湯の流れる音、桶の音、子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてくるようです。子どもをおんぶした人、子どもを叱っているおじいさん・・・描かれている人物を指さしながら小さなお話ができそう。うん、確かにこれはひきこまれますね!
こういう昔ながらの銭湯、今じゃもうほとんど見なくなったよね。それだけに、親世代には懐かしく、子どもにとっては新鮮に映るはず。孫たちが「おじいちゃん、コレなあに?」なんて聞きだしたらもう、しめたもの。こっちの土俵というわけだ。
おじいちゃんおばあちゃんが中心になって、「これは・・・で」と説明していくうちに、娘や息子たちは思い出話に花が咲き・・・、おお!これは確かに3世代で盛り上がれそう!
「お風呂あがりの一杯はコーヒー牛乳だよね~」「え~!フルーツ牛乳でしょ!」なんて会話が目に浮かびます!楽葉さん、こういう絵本もっと紹介してください!

ははは。Mさん、うまくハマったみたいだな(笑)。じゃあ、リクエストにお応えして、昭和のノスタルジー感漂う絵本ということで、この絵本はどうかな?
えんにち」ですか。うわ、もう表紙のお面からして、昭和のかおりが!(笑)
これも、文は最初にちょっとあるだけで、絵そのものだけで楽しめる絵本ですね。
あ、「カラーひよこ」あった、あった!懐かしい~!「おふろやさん」同様、この絵本もまた、祭り囃子の音や人のざわめきが聞こえてきそうです。
おまけに匂いもね(笑)。たこ焼きの屋台のページなんか見ていると、ソースのいい匂いが漂ってきそうだろう?縁日の屋台を組み立てるところからはじまって、主人公の「ふたり」の子どもと一緒に、まるで縁日にきたかのように屋台をまわっていく。1973年に発行された絵本だから、今から40年ほど昔の縁日の風景ってことになるかな。
でも、人々の洋服や売っているものには年代を感じさせますが、絵本から伝わってくる「縁日ならではのワクワク感」は、今も昔も変わらない。見ていると縁日に行きたい気分になっちゃいます。
ちょうど今の季節はあちこちで夏祭りが開かれるから、その前後に読むのもいいね。今どきのお祭りと昔のお祭りを比べながら、いろいろな話ができるんじゃないかな。 「えんにち」も「おふろやさん」も、おじいちゃんおばあちゃんから、お父さんやお母さんの小さい頃の話を孫にしてあげられる、良いきっかけになる絵本だと思うよ。
親世代からすると、子どもにナイショにしていた自分の子どもの頃の秘密が出てきちゃいそうで、ちょっと怖いですが(笑) 前回の「親子の会話が広がる絵本」もそうでしたが、絵本っていろんな楽しみ方ができるんですね!
ぜひまた次回も楽しいお話を聞かせてくださいね!
今回セレクトしていただいた本
おふろやさん えんにち  
「おふろやさん」
作・絵:西村繁男
出版社:福音館書店(1983年)
価格:800円(税別)
「えんにち」
作・絵:五十嵐豊子
出版社:福音館書店(1977年)
価格:品切れ
 

※全てさいたま市の図書館で借りることができます