絵本でちょっぴりミステリー気分

前回に続き、東浦和図書館と中央図書館のA木さんとS本さんをゲストに、先輩後輩コンビでお届けするブックトークの第2弾。今回は、前回のドタバタストーリーからうってかわって、はなんと「ミステリー」をキーワードに、謎解き気分が味わえる絵本の読み聞かせについてお話をうかがいました。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立東浦和図書館
児童・地域係 A木さん

司書歴12年、0歳の女の子を持つ新米パパ。おはなし会では数少ない男性語り手として活躍中。やさしい声とおだやかな語り口は、しっとりとした読み聞かせにぴったり。予想もつかないような結末の絵本が好き。

さいたま市立中央図書館
資料整理係 S本さん

司書歴5年、3歳の女の子のママ。愛嬌たっぷりのとぼけたキャラクターが登場する絵本が大好き。ちなみに娘さんのお気に入りは「ラチとライオン」で、ママがあげたライオンのマスコットをいつもポケットにしのばせているのだそう。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
きょうはなんのひ おまたせクッキー  
「きょうはなんのひ」
作:瀬田 貞二
絵:林 明子
出版社:福音館書店(1979年)
価格:1,200円(税別)
「おまたせクッキー」
作・絵:パット・ハッチンス
訳:乾侑美子
出版社:偕成社(1987年)
価格:1,200円(税別)
 

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

絵本にはドキドキするお話がたくさんありますよね。
もちろん、冒険をしたり魔女や悪モノが登場するようなストーリーもドキドキしますが、ミステリーのように犯人を当てたり、謎を解くような、いつもとちょっと違うドキドキが楽しめる・・・そんな絵本ってありますか?
謎解きですか!もちろん、ありますとも!
ナゾや暗号のようなエッセンスが取り入れられた「きょうはなんのひ」なんて、まさにピッタリじゃないでしょうか。実はこの本、子どもの頃から何度も繰り返し読んでいる、私の大好きな絵本のひとつなんですよ。
あ、なるほど「きょうはなんのひ」ね!
確かに、家の中に次々に現れるナゾのメッセージを追いかけながら話が進んでいくという点では、ミステリーというか探偵っぽい気分が味わえる、といえるかもしれないね。
女の子(まみこちゃん)とお母さんとお父さん、そんな3人家族の日常の、ちょっと特別な日のおはなしです。学校に行ったまみこちゃんが残したナゾのメモをヒントに、お母さんが次々メッセージを探していくんですが、初めて読んだ時の、まるで自分がお母さんと一緒に探しているようなワクワク感を大人になった今でもよく覚えています。
(本を読みながら)このナゾをとくことで「きょうはなんのひ」がわかる、というしかけになっているんですね。ああ、これは確かにワクワクしますね。
S本さん、これ読んだ後、まみこちゃんのマネしたくなりませんでした?
もちろん、マネしましたとも。(笑)
でも“謎解き”もさることながら、完成度の高いストーリーと、林明子さんの絵がとにかく素晴らしく、子どもも大人も心から感動できる良い絵本だと思います。
埼玉ゆかりの児童文学者 瀬田 貞二さんと、日本を代表する絵本作家の林明子さんのコラボによって生まれた名作絵本ですよね。
あ、でも、この本が誕生したのが1979年なので、“コラボ”というよりは“合作”というべきかもしれませんが(笑)。
ええっ、この本、そんな古い絵本なんですか!
林明子さんの作品は「WEBでブックトーク」や「本をはさんで親子で話そう」でも何度も取り上げていますが、時代は感じても古さを感じないのがスゴイですよね。
林明子さんの絵は、いつ見てもやさしく温かい気持ちにさせてくれますよね。
そうそう、この絵本には読み聞かせは5、6歳頃から、とありますが、“手紙(のメッセージ)”がポイントになっているので、文字の読み書きができる頃に読んであげるとより一層楽しめると思いますよ。
ああ、わかります!これ読んで私も、まみこちゃんのマネしたくなりましたもん(笑)。
ほかにも、こんな謎解きやミステリーのようなエッセンスが盛り込まれた絵本はありますか?

ミステリー、といえるかどうか微妙ですが、
ちょっと異色なハラハラ感という意味で、「おまたせクッキー」なんてどうでしょう?
お母さんが12枚のクッキーを焼き、最初は2人の子どもで分けるはずが、食べようとするたびにお客さんがやってくるんです。

人が増えるたび、1人で食べられるクッキーの枚数が減っていくので、おはなし会での子どもたちの反応が本当に面白いんですよ。お客さんが来るたびに「ああーっ!また減っちゃう!」って(笑)。

お母さんが焼いた12枚のクッキーをめぐって巻き起る静かなバトル・・・。
このハラハラ感はミステリー的エッセンスとして、アリだと思います!
個人的にですが(笑)

実はコレ、おはなし会の担当になってすぐの頃に(おはなし会で)読んだ絵本で、会場一体となって盛り上がった、私にとっては思い出のある絵本なんですよ。
会場には、5歳くらいの子から小学校低学年までがいて、小学生は「今何枚食べられるのか」を計算して、「わかった!○枚だ!」って声をあげて当てていくわけです。

じゃあ、計算ができない子は楽しめないかというと、そんなことは全然なくて。
幼稚園・保育園の小さな子たちでも「人が増えると自分の取り分が減る」ということはわかるらしく、お客さんが現れるたびにみんな本気でハラハラしていました(笑)。

食べ物がからむと、子供たちも必死なんですね。
次々にやってくるお友達。減り続ける分け前。果たしてクッキーは足りるのか!
事件が起こらずとも、これは子どもたちにとっては、サスペンスなみのドキドキハラハラといえるのではないでしょうか!(笑)。

最終的に子どもたちはクッキーを食べることができたのかどうか、気になるでしょう?
その結末はぜひ、絵本を読んで確認してみてくださいね。

今回セレクトしていただいた本
きょうはなんのひ おまたせクッキー  
「きょうはなんのひ」
作:瀬田 貞二
絵:林 明子
出版社:福音館書店(1979年)
価格:1,200円(税別)
「おまたせクッキー」
作・絵:パット・ハッチンス
訳:乾侑美子
出版社:偕成社(1987年)
価格:1,200円(税別)
 

※全てさいたま市の図書館で借りることができます