思ってたのと違う!

挿絵やタイトルで選んだ絵本が、いざ読んでみたらイメージと全然違ってビックリ!そんな経験はありませんか?「●●な話だと思っていたのに・・・」とがっかりするのではなく、むしろそのギャップを楽しんでしまいましょう!。そこで今回は、「思ってたのと違う!」と題し、ユニークな絵本に目がない中央図書館のお二人と一緒に、思わず「えええっー!」と声が出る驚きの展開の絵本をご紹介します。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立中央図書館
児童サービス係 A山さん

司書歴3年、厚いくちびると太い眉毛がチャームポイントのダジャレ好きな若手期待の星。テレビやDVDでは飽き足らず、落語やコントなどのライブにも足を運ぶ、筋金入りのお笑い好き。好きな絵本のジャンルはもちろんコメディ。

さいたま市立中央図書館
児童サービス係 O田さん

司書歴6年。好きなジャンルは翻訳絵本、趣味は近所のノラネコ観察。おはなし会で与えられた役は何でもこなし、その役への入りこみぶりと舞台度胸は、A山さんいわく「アカデミー賞間違いなしの女優」なのだそう。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
だるまさんが あらまっ! つきよのかいじゅう
「だるまさんが」
作・絵:かがくい ひろし
出版社:ブロンズ新社(2008年)
価格:850円(税別)
「あらまっ!」
作:ケイト・ラム
絵:エイドリアン・ジョンソン
訳:石津 ちひろ
出版社:小学館(2004年)
価格:1,350円(税別)
「つきよのかいじゅう」
作・絵:長 新太
出版社:佼成出版社(1990年)
価格:1,359円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

タイトルや挿絵は絵本を選ぶ上で重要な要素ですが、なかには「ええっー!」と思わず声が出てしまうほど、イメージとのギャップに驚く作品も少なくありません。
今回は、そんなまさかの展開に「だまされたー!」と悲鳴をあげつつ、あえて“ギャップ”を楽しんじゃおう!というのが狙いです。
いわゆる「思ってたのと違う!」という絵本ですね。
私がまっ先に思い浮かんだのはコレ、「だるまさんが」です。
「だるまさんが・・・・」に続く言葉といえば、「転んだ」ですが、今回のテーマからわかる通り、だるまさんが・・・・転びません(笑)。
じゃあ、「笑う」とか「怒る」とか「踊る」のか?というと、これまたそうでもなく。
もう、だるまさんそのものがエライことになってまして。(笑)
その予想外の面白さから、赤ちゃん絵本の定番として人気の高い作品です。
(本をめくりながら)
・・・・確かに、これはエライことになってますねぇ。(笑)
もはや、だるまとしてどうなのという・・・・いやー、うん。想定外です、コレ。
確かにこれは、お母さんも赤ちゃんも思わず笑っちゃいますね。
赤ちゃんおはなし会で読むことも多くて、歩き始めの2歳くらいの子なんかは、だるまさんの動きを真似て体を一緒に動かしながら聞いてくれますね。
以前、職場体験で読み聞かせに参加してくれた中学生が、即興で「だるまさんが・・・」の続きを体で表現してくれたところ、これには赤ちゃんも大笑い。親子で体を動かしながら楽しめる絵本としてもオススメです。
ちなみに、1日図書館職員で小学生が職場体験した際にも、この絵本で読み聞かせをやってもらったんですが、小学校高学年にもかかわらず大ウケで。
以前こちら(「モノのきもちになってみよう」)で紹介された「いちにちぶんぼうぐ」もそうですが、見開きごとに完結するインパクトのある絵本は、小学校高学年でも楽しめるものが多いですね。
そういえば「本をはさんで親子で話そう」でも、子ども自身が楽しいと感じるものを読むことが、本を好きになる基礎になる、という話をうかがいました。絵本は小さい子の読むもの、と決めつけず小学校高学年になっても楽しんでいいんですね!

いいんです!「思ってたのと違う!」という展開では、この本「あらまっ!」なんかも小学生には楽しめると思いますよ。おばあちゃんの家に泊まりにきた孫のパトリック。夕方になって「早く寝なさい!」と言うおばあちゃんに、「ベッドがないから寝られないよ」ということを言いだして・・・・。
で、「あらまっ!こりゃ大変!」とベッドを用意するおばあちゃん。ベッドが用意できたら今度は、「枕がないから寝られない」・・・そんな二人のやりとりが続き、パトリックがアレがない、コレがないというたび、「あらまっ!」と用意するのですが・・・・。
その用意の仕方が、「思ってたのと違う!」と。
(本を見ながら)ああ、これは!このバカバカしさは、ちょっと想定外です!
これは、子どもたちが「えーっ!」って声出しますね、絶対。
でもこのパトリック、〇〇がなくて寝られない状況に、全然困っているように見えないんですが。
いやぁ、困ってないでしょう(笑)。
皮肉っぽくて挑戦的なこの態度。「ちびまる子ちゃん」の“永沢くん”に近いものを感じませんか?この場面なんか、「寝るって言ったって、ベッドなしでどうやって寝るんだい?藤木くん」って言ってそうでしょう?
あはははは!今、私パトリックのセリフ、脳内で“永沢くん”の声で再生しちゃいました。読み聞かせするとしたら、もう、あの口調以外に考えられませんね!
イラストやタイトルからは、想像できない面白さ。いい意味で期待を裏切ってくれる、まさしく「思ってたのと違う!」絵本ですね。

最後にご紹介するのはこちら、「つきよのかいじゅう」。思っていたのと違う、まさかの展開、という点では今回の“真打ち”といえるかもしれません。
湖のそばで10年間かいじゅうが出てくるのを待ち続けた男が、ある月夜に表紙の“コレ”に遭遇するわけです。 最初は予想通りに進んでいくので、「おお!ついに怪獣が!」とドキドキするのですが、途中からだんだん雲行きが怪しくなり・・・
で、「ええええええーっ!」と。
以前、3歳から小学校低学年くらいの子どものおはなし会で読んだ時には、あまりにも予想外すぎたのか、「え?なに?なに?」って感じで、子どももお母さんも目が点になっていました。(笑)
(本をめくりながら)
ふんふん・・・ふんふん・・・・え・・・・ええええええーっ!
長 新太さん作という時点で覚悟はしていましたが、いや、こうくるとは。 しかしこの、何の役にも立たない感じが、なんともクセになるというか。
お笑い芸人が、一発ギャグをやって、シーンとなって、・・・「ハイ!」みたいな。(笑)
前衛的ですよね。私も初めて読んだ時、「なんてアバンギャルドな絵本なんだ!」と思いましたもん。
表紙の“コレ”の正体が何なのか?男の待ち続けていた怪獣なのか?
ナンセンス絵本の王様 長 新太さんの作品ですので、納得いく結末かどうかは別として、最後には明らかになります。
気になる方は、ぜひ絵本を手にとって確かめてみてくださいね。
今回セレクトしていただいた本
だるまさんが あらまっ! つきよのかいじゅう
「だるまさんが」
作・絵:かがくい ひろし
出版社:ブロンズ新社(2008年)
価格:850円(税別)
「あらまっ!」
作:ケイト・ラム
絵:エイドリアン・ジョンソン
訳:石津 ちひろ
出版社:小学館(2004年)
価格:1,350円(税別)
「つきよのかいじゅう」
作・絵:長 新太
出版社:佼成出版社(1990年)
価格:1,359円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます