たまには省エネモードで読み聞かせ

家族のお世話をして、家事をこなして、働いて。専業・兼業を問わず、何かと忙しいママの1日。疲れてグッタリしている時に子どもに「絵本読んで!」と言われ、ついイラッとしてしまった。そんな経験をお持ちのママも少なくないのではないでしょうか。そこで今回は北浦和図書館からゲストをお迎えし、「ママは楽して子どもも大満足!」そんな時間や体力がない時のためのお助け絵本についてブックトークを繰り広げます。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立北浦和図書館
児童・地域係 Y崎さん

司書歴17年。アートに明るく自身も油絵を描くほか、ガーデニングやミシンでの小物づくりなど趣味も多彩な、6歳の女の子のママ。自らの子育て経験をふまえた的確な読み聞かせアドバイスは、わかりやすいと好評。

さいたま市立北浦和図書館
児童・地域係 Y丸さん

司書歴2年。ピアノが得意で音感が良く、わらべ歌が上手。おはなし会の常連ママから大人気を誇る、おはなしのお兄さん。虫や動物を至近距離や変わった角度から撮ったダイナミックな写真を使った写真絵本が大好き。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
ふしぎなナイフ ごきげんのわるいコックさん あと10ぷんでねるじかん
「ふしぎなナイフ」
作:中村 牧江/林 健造
絵:福田 隆義
出版社:福音館書店(1997年)
価格:800円(税別)
「ごきげんのわるいコックさん」
(紙芝居)

脚本・絵:まつい のりこ
出版社:童心社(1985年)
価格:1,600円(税別)
「あと10ぷんでねるじかん」
作・絵:ペギー・ラスマン
訳:ひがしはるみ
出版社:徳間書店(1999年)
価格:1,800円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

育児は時間と体力の勝負で思うようにはいかないもの。私は読み聞かせが好きな方なのですが、それでも疲れていたり時間がない時の、子どもからの「絵本読んで!」は辛かったですね。でも読まないと寝てくれないのでなんとか頑張って読むのですが、イライラが伝わるのか、子どもは全然喜ばないし、こっちもさらにイライラで悪循環に。
ママがあせったりイライラしていると、つい早口になったり声のトーンが変わってしまい、お子さんも気持ちが落ち着かないのでしょうね。とはいえ、私もワーキングマザーの一人として、Mさんの気持ちもよくわかります。そこで今回は料理の時短テクのように、「ママが楽できて子どもも満足!」な絵本をご紹介したいと思います。
文字を追って声を出すのって、結構大変ですからね。眠い時や体調が悪い時は特に。でも、絵本のなかには「きっちり読まなくても楽しめる絵本」はたくさんありますから、「ふしぎなナイフ」のように短い単語だけで成立する本を選ぶと良いと思います。ひらがなが読めるお子さんなら、お母さんに代わってに読んでくれるかもしれません。
「絵本読んで」と言われると、つい「読まないと」と構えてしまいがちですが、子どもの方は案外単純にママと一緒に絵本を眺めるだけで実は満足だったりすることも結構あるんですよ。そういう時に活躍してくれるのが「ふしぎなナイフ」のような、絵に力があり言葉がなくても引き込まれる絵本なんです。
文字は「われる」「まがる」「のびる」といった単語のみ。絵も見開きごとに文字の通りに形状を変えた1本のナイフが描かれているだけのいたってシンプルな絵本なのに、驚きや美しさがあって、いつのまにか絵本の不思議な世界に引き込まれてしまう。サッと眺めるだけで満足できる、というのも納得です。なんというかこの本、クセになりますね。
そうなんです。何度見ても飽きなくてしかも短いので、子どもは満足、ママは大助かり。うちでも大活躍してくれました。夕飯の準備などで時間がない時の「絵本を読んで」には、「じゃあ、ナイフ見よう!」が合言葉。一緒に声を出しながら読み終えるまで、だいたい2~3分くらい。「面白かったね~」って言って、急いでご飯を作っていました。
対象年齢は2歳からですが、「われる」「まがる」「おれる」など、ナイフで表現されている言葉の意味がわかっているかいないかで、お子さんの反応が大きく違います。もし今反応が得られなくても4歳~5歳になって語彙や経験が増え、絵本で読んでもらったことと同じ体験をした時、「知ってる!絵本で見たアレだ!」という喜びの反応が見られると思いますので、反応が薄くても諦めずに何度か挑戦してみて欲しいですね。
そういえば以前、「本をはさんで親子で話そう」のこちらの回でも、書いてあることと経験のリンクで子ども反応は生き生きする、という話がありましたね。
閑話休題、では引き続き、「ママが楽できて、子どもも大満足な絵本」・・・いえ、「毎日忙しいママのお助け絵本」をぜひご紹介ください(笑)。

では私からは絵本ではなく紙芝居で、「ごきげんのわるいコックさん」を。
紙芝居は絵本とちがい、紙を抜くことで画面が変わりおはなしが進みます。この紙芝居は、その“抜き”の演出がおはなしを盛り上げてくれる作品です。
あ、これは楽しい!見るだけでわかるから、ひたすら「コックさーん」と「ジャン!」だけでもいけちゃいそう(笑)。風邪をひいてのどが痛くて声をあまり出したくない時に、これは使えるかも!ラストのしかけも楽しいし、これは子どもたちに人気があるでしょう?
ありますね。
私も、おはなし会に参加し始めの、読み聞かせにまだ慣れていない頃に読みましたが、子どもたちが大笑いしてくれました。最後にコックさんらしい仕掛けがあり、「どうぞ」と渡す仕草をすると、取りに来てくれる子もいてうれしかったですね。
もちろん、こういう風に読むといいですよ、というガイドラインはありますが、お家での読み聞かせでは、その通りに読まなくちゃ、と気負う必要はないんです。イライラして早口で読まれるより、子どもにとっては、適当に流してでもママが楽しそうな方が絶対うれしいはず。絵本をはさんでママとおしゃべりするだけでも、十分立派な読み聞かせなんですよ。
そうですよね。いつも頑張っているママにエールを送ろう、というのが今回のテーマの根底なので、そういっていただけるとうれしいです。料理だって、読み聞かせだって、手を抜けるところは抜いていいですよね!もちろん全部コレではまずいですけど(笑)

では、最後に私からのおススメは、「あと10ぷんでねるじかん」を。娘が1歳10ヶ月の時に出会って以来、繰り返し読み続けている、私にとっても娘にとっても思い出の絵本で、6歳になった今も好きな絵本を聞くと必ず名前があがってくるほどのお気に入りなのですが、実はこの本「読む」ところはほとんどないんです。
「あと10ぷんで、ねるじかん!」とお父さんの声がして、寝る支度を始めたところでなぜか、ハムスターの大群がうちに集まって好き勝手なことを始めてしまいます。1ページごとに1分カウントダウンされるだけで読むところはほとんどないのですが、ページいっぱいハムスターたちがとても賑やかで、見ているだけで楽しくなる絵本です。
大勢のハムスターの中にベビーカーに乗った赤ちゃんとママがいるのですが、娘はこの赤ちゃんとママを自分と私に見立てて、「ここ、ママいた」ってページを開くたびに探して、私はそれに「いたねぇ」「ほんとだねぇ」って答えるだけ。でも娘はそれが本当に楽しかったようです。
わ、これは楽しい!どのハムスターもすごく個性的で、1匹ごとにおはなしがつくれそうですね。「しましまの子はどこかな?」みたいに、さがし絵のような楽しみ方もできそう。そうか!ママが大変な時、気持ちや時間に余裕がない時は、こんな風に「子ども自身が楽しみを見つけられる絵本」を選べばいいんですね!
先ほどもお話しましたが、読み聞かせで一番大切なのは「ママの声で話しかけること」なんです。子どもがつくりだす、個性的なハムスターの1匹1匹のストーリーにただうなずいてあげるだけでもいいんです。ママがしっかり読まなくても楽しめる絵本はまだまだたくさんあるので、忙しい毎日の読み聞かせに上手に活用してくださいね。
今回セレクトしていただいた本
ふしぎなナイフ ごきげんのわるいコックさん あと10ぷんでねるじかん
「ふしぎなナイフ」
作:中村 牧江/林 健造
絵:福田 隆義
出版社:福音館書店(1997年)
価格:800円(税別)
「ごきげんのわるいコックさん」
(紙芝居)

脚本・絵:まつい のりこ
出版社:童心社(1985年)
価格:1,600円(税別)
「あと10ぷんでねるじかん」
作・絵:ペギー・ラスマン
訳:ひがしはるみ
出版社:徳間書店(1999年)
価格:1,800円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます