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前回に続き、春野図書館の男性トリオをゲストにお迎えしてのブックトーク。12月ということで、テーマはズバリ「サンタクロースが登場する絵本」がテーマ。「サンタ!サンタ!サンタ!」と題し、三人三様のユニークな視点で、クリスマスシーズンにおススメのとっておきのサンタ絵本について、賑やかにブックトークを繰り広げます。 |
今回のブックトークゲスト | |
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司書歴6年。登山で鍛えた野生のカンで、リサイクルショップをめぐってはお宝を掘り出すトレジャーハンター。五味太郎の絵本や参加型絵本が好きで、幼児に懐かれやすく、おはなし会では子ども達に囲まれることも。 |
![]() さいたま市立春野図書館 |
司書歴23年。本の要塞と噂される部屋に住み、ブルーインパルスをこよなく愛する本の虫。一方、多趣味でフットワークが軽く、歴史や軍事から旬の映画やサブカルチャーまであらゆる話題に精通した博学ぶりは、まさに歩くトリビア。 |
![]() さいたま市立春野図書館 |
図書館勤務7年、児童担当3年目。図書館での映画会実施に並々ならぬ熱意を持ち、仕事も速く何かと頼れるナイスガイ。お母さん方に安心感を与えるその天性の“お父さん感”から、あかちゃんおはなし会になくてはならない存在。 |
※プロフィール内容は取材当時のものです
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「まどから★おくりもの」 作・絵:五味 太郎 出版社:偕成社(1983年) 価格:1,080円(税別) |
「サンタのおまじない」 作・絵:菊地 清 出版社:冨山房(1991年) 価格:1,296円(税別) |
「サンタクロースってほんとにいるの?」 作:てるおか いつこ 絵:杉浦 範茂 出版社:福音館書店(1982年) 価格:972円(税別) |
※全てさいたま市の図書館で借りることができます
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さて、今回は12月公開のブックトークということで「サンタ!サンタ!サンタ!」と題し、「サンタクロースが登場する絵本」をテーマにお話いただこうと思います。実は、今回ブックトークにあたり、さいたま市立図書館のHPで「サンタクロース」と検索したところ、なんと800件以上という検索結果が!ということは、サンタの登場する絵本も相当な数に上るのでしょうね。 |
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その数字は、すべての図書が対象ですから絵本となると、さすがにそこまでは多くないです。ただ、それでも実際、サンタクロースが登場する絵本は結構ありますね。 しかも、タイトルに“サンタクロース”が入っていないのにサンタが登場する、というパターンはその検索結果には含まれていませんし。 |
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まさに!私がご紹介したい絵本「まどから★おくりもの」は、その典型です。五味太郎さんのしかけ絵本なのですが、初版が1983年のベストセラー絵本で、私自身も小さい頃に繰り返し読んだ、思い出深い絵本です。当時はしかけ絵本があまり身近になかったこともあり、読むたびにワクワクしていました。自分が図書館に勤めるようになっていまだに人気があると知った時は、驚くと同時にとてもうれしくなりました。 |
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子どもの頃に読んだ本が、いまだに現役だっていうのはうれしいですよね。五味太郎さんの絵本は、古さを感じないスタンダードな絵本が多く、なかでもしかけ絵本は、ちょっとひねりが効いていて、大人が読んでもニヤリとしてしまいます。この絵本もまさにそう。窓がしかけになっていて、ページをめくると思わず「えっ!?」と驚かされます。 |
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最初に窓から見えていたものが、次のページで「○○と見せかけて・・・実は▲▲でしたー!」と種が明かされるパターンを繰り返しながら進んでいくのですが、それがあまりにも予想外すぎて笑ってしまう。この部分(ページを開きながら)なんてもう、わかるわけないですよね。何回見ても「これはないよー」と笑っちゃいます。 |
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ミスリードによるどんでん返しの面白さ、ですね!パターンから予測して、こっちも騙されないぞ、と予想してページをめくるのに、こうも結果が予想の斜め上すぎるともはや笑うしかないですよね。でも、子どもたちは予想がはずれてがっかり、なんてことはないんでしょうか? |
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ないです!ほぼ毎年、クリスマスシーズンのおはなし会で読んでいますが、はずさないですねぇ、この本は。私自身、何度も読んで先を知っているので、「次のページで(子どもたちは)どう反応するかな?」とワクワクしながらページをめくるわけです。すると、やっぱり「エー!?」の声があがって大爆笑。 |
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私も何度かおはなし会で読んだことがありますが、やっぱり受けがいいですね。しかけや内容がシンプルで、「見る」だけでも十分楽しめる絵本なので、誰が読んでも失敗しない。「読む」というハードルが低いぶん、読み聞かせが苦手な方や普段絵本を読まないお父さんにもおすすめです。 |
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しかけ絵本としても良くできているので、クリスマスに限らず1年中楽しめる絵本です。複雑で高価なしかけ絵本と違い、ペラペラと普通にめくっているくらいではそう簡単に壊れません。壊れるとしても穴が少し破ける程度ですから、はじめてのしかけ絵本としてもぴったりの一冊だと思いますよ。 |
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ネタバレになってしまうので、「○○と見せかけて・・・実は▲▲でしたー!」というのが具体的に説明できないのがなんとも残念!気になる方は、ぜひ実際の絵本で確認していただくとして、それにしても、まんまとひっかかちゃってるのに、大爆笑とは。子どもってホント、予想外の展開が好きですよねぇ。 |
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予想外という点ではこちらの「サンタのおまじない」も、おはなし会で人気の絵本です。「いち、にい、サンター!」のおまじないをとなえると、「ちょきちょきぱちん」のリズムとともに、ピーマンがクリスマスツリーに、にんじんがヘリコプターに、といった具合に、野菜がステキなプレゼントに変わっていくんです。 |
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サンタさんからのプレゼントにワクワクして箱を空けたら、中身は自分の苦手な野菜。思わず「えー、なにそれー」ですよね。でもそのがっかりしたところに、サンタのおまじないをとなえると、アラ不思議。プレゼントに一気にグレードアップする。そのギャップと意外性がまるで魔法のようで、子どもの心をひきつけるのだと思います。 |
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保育園でのおはなし会と年末のわくわくおはなし会では、「サンタのおまじない」でパネルシアターをやりました。このパネルシアターは、ほかの図書館のおはなし会と時期的にかぶることも多いことから、「じゃあ、作ってしまおう!」と、春野図書館の職員みんなで作ったんですよ。 |
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著作権などの問題があるので、きちんと許可を取り、指定の方法で一つひとつ、絵本と同じしかけを頑張って作ったのですが、本と同じ色を出すのに苦労しました。演じるときは、最初に野菜のままの形で出して、子どもたちに「いち、にい、サンター!」「ちょきちょきぱちん」を声に出してもらい、その声に合わせて変形させました。 |
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さっきまで野菜だったものが、一瞬で素敵なプレゼントに!まるでマジックショーですね!子どもたち大喜びだったでしょう? |
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保育園訪問で、100人くらいの子どもの前でやった時の盛り上がりはすごかったですね。100人全員が声をそろえての「いち、にい、サンター!」の大合唱。先生もびっくりしていました。春野図書館以外でも、さいたま市の他の図書館でこの絵本のパネルシアターを取り上げる所もあるので、見たというお子さんもいるかもしれませんね。 |
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では最後はこちら、「サンタクロースってほんとにいるの?」。 今回のテーマとしては、ちょっと変わったアプローチですね。てっきり、サンタはいる、というのが前提になった絵本ばかりかと思っていたので意外です。 |
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「サンタはいるのか、いないのか」。小学生以下の子どもにとって、これは大人が思う以上にとても大きな問題なんです。私自身の子ども時代を思い返してみても、このサンタ問題に真正面から向き合ってくれる大人はなかなかいない。サンタについていろいろ聞いてみたいのに、話題に出するのが許されない雰囲気がありました。 |
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大人からしたら、「いい子にしていないと、サンタさんが来ないよ」と、サンタを信じさせておきながら、今さら「いない」とはいえないですからね。もし「いない」といえば、子どもをだまし続けてきたことになるわけですし。そりゃ、返答に困りますよね。 |
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かといって、友達やテレビなどで情報が得られる年齢ともなれば、信じさせ続けるのにも無理がある。その結果、面倒くさくなった大人は答えたとしても「いるよ!」とか「いないよ!」程度で、「これ以上聞くな!」という雰囲気を醸し出してしまうんでしょうね。 |
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この絵本の中のお父さんとお母さんは、お風呂の中で、年賀状を書くその横で、子どものサンタについての質問にきちんと向き合っている。質問も、どれも子どもなら、聞いてみたい!と思うものばかり。だから大人になって、初めてこの本と出会った時、「ああ、私も子どもの頃、こんな風に話したかった」とすごく思ったんです。 |
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子どもがサンタクロースが実在しないことに気づいた時、「だまされた」と思うのか、「夢がみられて良かった」と思うのか。大事なのは「サンタクロースがいるか、いないか」ではなく、子どもに寄り添い一緒に答えを考えること、なのかもしれませんね。そう考えると、サンタ問題の本質は、実は親子の信頼関係にあるのかな、という気がします。 |
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答えを一緒に考える。なるほど、確かにそうかもしれません。この本は、答えのない、「サンタクロース」というファンタジーをどうやって終わらせるかについて考えるうえで、おすすめしたい一冊です。この本に出てくる親子に自身を重ねながら、お子さんと一緒にサンタクロースについて話し合ってみてはいかがでしょうか。 |
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「まどから★おくりもの」 作・絵:五味 太郎 出版社:偕成社(1983年) 価格:1,080円(税別) |
「サンタのおまじない」 作・絵:菊地 清 出版社:冨山房(1991年) 価格:1,296円(税別) |
「サンタクロースってほんとにいるの?」 作:てるおか いつこ 絵:杉浦 範茂 出版社:福音館書店(1982年) 価格:972円(税別) |
※全てさいたま市の図書館で借りることができます