寒い冬をあったかく

今回ご登場いただく、大宮西部図書館のY田さんは、実は今回が6年前ぶりの再登場。当時まだ8歳と4歳だった2人の娘さんも、今や思春期まっただ中ということで、冬から春にかけておすすめの絵本をご紹介いただくとともに、読み聞かせを卒業したお子さんとの思い出を交えながら、3回連続で濃密ブックトークをお届けします。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立大宮西部図書館
児童・地域係 Y田さん

司書歴20年。14歳と10歳の姉妹の子育てに日々奮闘中のワーキングマザー。「食べもの」が登場する絵本が大好きで、お子さんとのコミュニケーションに読み聞かせを活かした体験からのアドバイスは、子育て中のママに定評あり。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
「そりあそび」
作・絵:さとう わきこ
出版社:福音館書店(1994年)
価格:900円(税別)
「ぼくたち ゆきんこ」
作:マーティン・ワッデル
絵:サラ・フォックス=デイビーズ
訳:山口 文生
出版社:評論社(2002年)
価格:1,300円(税別)
「ワタナベさん」
作・絵:北村 直子
出版社:偕成社(2018年)
価格:1,200円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

今回、ゲストにお迎えする大宮西部図書館のY田さんとは、実は6年ぶりのブックトーク。いつもの季節やテーマにあわせたおすすめ絵本のお話もさることながら、読み聞かせを卒業した子どものママ同士ということで、この6年間をふり返り、絵本をめぐる子育ての思い出などもお話しいただければと思います。
6年前に8歳と4歳だった娘たちも、いまや中学3年生と小学5年生。こうして読み聞かせを卒業した今、振り返ると絵本を通して子どもと深くかかわる時期って、なんだかあっという間だったような気がします。
そうなんですよねぇ・・・って、スタートからいきなりしんみりしちゃダメダメ(笑)
その辺りのお話はまた後でじっくりうかがっていくとして、まずはこの季節にあった絵本をいくつかご紹介いただきたいと思います。今回は2つのテーマをご用意いただいたとか。最初のテーマは「寒い冬をあったかく」でしたね。

そうです。寒い冬が舞台のお話なのに、読んでいてあったかくなる、そんな絵本を3冊ご用意しました。まずはコレ。子どもに人気の“ばばばあちゃん”シリーズの「そりあそび」を。冬の定番絵本なのでご存じの方も多いかもしれませんね。最後はみんなポカポカになるんですが、その方法がなんとも奇想天外でユニークなんです。
あっ、これ、うちの子(中学1年)の英語の教科書にも載ってました!英訳されて、実際のお話よりかなり短くなってますが、お話の目玉の “ばばばあちゃん”がそりあそびを思いつく場面はバッチリ描かれています。でもこのお話、タイトル通り “そりあそび”はするものの、これだけで体がポカポカになるわけではないんですよね。
そう。普通は「みんなで楽しく遊びました」と、ここ(“そりあそび”の場面を指しながら)で終わるのに、“ばばばあちゃん”はそうじゃない。寒さに震える子どもたちに「暖炉で温まりなさい」ではなく、「外で遊んでおいで!」と外に放り出すタイプ。決してやさしいおばあちゃんではないのに、子どもたちに人気があるんです。不思議でしょう。
子どもにすり寄ったり、おもねったりせず、ダメなものはダメ、突き放す時は突き放す。古きよき昭和の口うるさいおばあちゃん、って感じですよね。今って、昔に比べて大人が子どもに気を遣う時代というか、ある意味“甘い大人”が増えるなかで、子どもたちからしたら「こんなおばあちゃん、イヤだ!」ってなりそうなのに。ちょっと意外。
子どもにおもねらず、ちゃんと距離を保ちながら、ブレない自分の姿勢を持っている。そんな“ばばばあちゃん”を、子どもたちは絵本の動物の子どもたちと一緒になって、とんでもないことをやらかすのをワクワクしながら楽しんでいるんでしょう。「あめふり」や「すいかのたね」など、どの作品も子どもたちにとても人気があるんですよ。
寒さにブルブル震える動物の子どもたちを、“ばばばあちゃん”はどんな方法で体をあたためるのか。その奇想天外な“やらかしぶり”を、ぜひお子さんと一緒に楽しんで欲しいですね。続いてこちらの絵本「ぼくたち ゆきんこ」を。これも雪あそびのお話なんですね。

そうです。ゆきんこ(雪の童子)のように雪まみれになって雪遊びする熊の親子の様子を描いた絵本なんですが、見て下さい、この母熊のたっぷり空気を含んだ温かでふわふわの冬毛!真っ白な雪の冷たさとの対比が見事で、母熊と子熊の遊んでいる様子を見ていると、雪まみれで寒い光景なのになんだか温かい気持ちになるでしょう。
わあ、モフモフの3匹の子熊と、母熊の巨大なモッフモッフ感。毛玉と雪のコラボレーション!これは見ているだけで温かい!ちょっと反則じゃないですか。これは(笑)。
ふふふ。本当のあったかさはここからです。体の冷えた末っ子熊が「おうちに帰りたい」と言い出し、母熊と子熊は家に帰ります。暖炉の前で体を温める子熊たちに、母熊が持ってきたのは、焼き立てのトースト。これを暖炉の前でみんなで食べるんですが、このこんがり焼けたトーストの温かそうでおいしそうなこと!
うわー、おいしそう!はっ、これはアレだ!シチューのコマーシャルだ(笑)!
寒い外、温かい部屋、やさしいお母さんと子どもたち。シチューがおいしく見えるシチュエーションですよ、コレ。寒い雪遊びの場面から、一気に温かい場面に切り変わったことで、食べ物の温かさが際立つ仕掛けですね。うまいなあ。
そうなんです!もう本当に、このトーストがあったかくて、おいしそうで。そこを見て欲しくてこの本を選んだようなものです。冷たい雪の外と、安心できる家の中。楽しい外とほっとできる家。家族のふれあい。それが本当に温かく描かれている。「ぼくたち ゆきんこ」というタイトルなのに、実はこんなにもあったかいお話なんです。
そりあそび」とはまた違う、冬ならでの温かさが感じられる絵本ですね。
絵本と同じトーストでなくても、外で雪遊びした後、家であたたかいシチューを食べたら、この熊たちと同じ気分が味わえそう。あっ、でも、おでんや鍋でもいいかも。

むむっ、今、Mさん、「鍋」といいましたね?最後にご紹介するこちらの「ワタナベさん」は、まさに鍋が主役の絵本なんです。ちょっとシュールで昭和な感じがあり、40代~50代のお母さんの“ツボ”をくすぐる絵本といえるのではないでしょうか。ネットでも、ユーモア絵本として結構人気があるんですよ。
「ワタナベさんやってるー?」っていきなり、割烹着にパーマのおばちゃんが。最初のページからいきなり昭和感満載ですね。いやもう、大好きです。こういう世界観。
ふんふん、このワタナベというお店の店主がワタナベさんで、鍋ひとつで料理を作る名人なんですね。お客さんが料理を持ち帰るということは、お惣菜屋さんなのかな?
うーん、持ち帰りできる料理屋さん、ですかね。おでんにロールキャベツ、カレーに炊き込みご飯。鍋ひとつで何でも作っちゃう料理上手なワタナベさんに料理を注文して作ってもらい、それを持ち帰るためにお客さんは鍋を持って並ぶわけです。またその鍋もそうですが、お店の黒電話とかお客さんの服とか、昭和のレトロ感たっぷりで。
あった、あった!花柄のホーロー鍋!古臭さではなく、昭和の温かさがうまく表現されていますよね。映画の「三丁目の夕日」のような。でも、昔は今のようにいろんな調理器具がなくて、限られた調理器具を工夫して何でも作っていたことを思うと、ワタナベさんに昭和のお母さんのイメージが重なりますね。
そんなワタナベさんのもとに、ある日男の子がやってきて「ナポリタン」をオーダーするんです。でも煮込み料理は得意だけど、さすがにパスタはフライパンがないとムリと断るんですが、「なんでもナベひとつでつくれるんでしょ」という男の子の一言に、ワタナベさんの職人魂というか、ナベ魂に火がついちゃうわけです。
これ、子どもにムチャな料理を要求され、家の食材や調理器具でなんとか作ろうとするお母さんの姿と重なりますね。そんな急に「ティラミス作って!」っていわれても、マスカルポーネチーズなんてうちにはありません!みたいな(笑)。でも、そこをワタナベさんは頑張ってくれる。私、今日から家の鍋を「ワタナベさん」って呼んでしまうかも(笑)
ワタナベさんの奮闘ぶりは絵本で読んでいただくとして、なんと絵本の最後に、このワタナベさんが編み出したナポリタンのレシピが載っているんです。すごいでしょう!
私もこれ食べてみたくて挑戦したんですが、ワタナベさんのようにうまくできなくてちょっと残念。でも、絵本の中に登場する食べ物を実際に作ってみるのは楽しいですよ。
ワタナベさん考案のナベひとつで作るナポリタン。お子さんと一緒につくったら、きっと楽しそうですね!寒い冬を親子で心も体もあったかくなる、そんな絵本をご紹介いただきました。次回も引き続き、大宮西部図書館のY田さんからこの季節に読みたいとっておきの絵本をご紹介します。お楽しみに!
今回セレクトしていただいた本
「そりあそび」
作・絵:さとう わきこ
出版社:福音館書店(1994年)
価格:900円(税別)
「ぼくたち ゆきんこ」
作:マーティン・ワッデル
絵:サラ・フォックス=デイビーズ
訳:山口 文生
出版社:評論社(2002年)
価格:1,300円(税別)
「ワタナベさん」
作・絵:北村 直子
出版社:偕成社(2018年)
価格:1,200円(税別)

※全てさいたま市の図書館で借りることができます