絵本から児童文学へ<前編>

小さい頃から絵本を読み聞かせしていても、小学生くらいになるとひとりでの読書に苦手意識を持つ子が出てきてしまうもの。そこで今回のブックトークでは、北浦和図書館のS野さんとU田さんに、読書が苦手な子でもワクワクしながら読める絵本や、親ができるサポート方法を教えていただきました。
今回のブックトークゲスト

さいたま市立北浦和図書館
児童・地域係 S野さん

司書歴17年。絵本にとても詳しく、すばなし、わらべうた、手遊びなどのレパートリーも豊富で、まるで頭の中に児童室がまるごと入っているかのような児童・地域係の鑑(かがみ)。趣味は料理で、作るのも食べるのも大好き。今回取り上げたチョコレートも、いつも机の中に忍ばせているのだとか。

さいたま市立北浦和図書館
児童・地域係 U田さん

司書歴15年。やわらかい笑顔の中にしなやかさがあり、仕事のスピードも早く、いつも頼りになる存在。ラッセル・ホーバンの「フランシス」シリーズのような、ほんわかした中にくすっと笑える要素がある絵本がお気に入りなんだそう。おはなし会で披露してくれる、美しく優しい歌声も魅力です。

※プロフィール内容は取材当時のものです

今回セレクトしていただいた本
 
「こんにちは おてがみです」
出版社:福音館書店(2006年)
価格:1,600円(税別)
「ゆかいなゆうびんやさん」
作・絵:ジャネット&アラン・アルバーグ
訳:佐野 洋子
出版社:文化出版局(1987年)
価格:1,200円(税別)
 

※全てさいたま市の図書館で借りることができます

読み聞かせで絵本を楽しんでいた子どもも、小学生あたりから、ひとりで本を読む機会が増えてきますよね。でも、『エルマーのぼうけん』のような児童文学となると、ひとりでどんどん読んでいく子と、苦手意識を持つ子に分かれてしまう気がします。
確かに!この違いはいったいどうして起こるんでしょう。読む派の子どもだった私としては、苦手意識を持ってしまうのはちょっともったいないなあ、と思います。
ひとりで読書を楽しめる子と、楽しめない子。その違いを考えた時、「頭の中にイメージを広げられるかどうか」はひとつのポイントといえるかもしれません。
頭の中にイメージ……?どういうことですか?
たとえば、本の中に「りんご」と文字で書かれていても、りんごを知らなければ、何のことなのかわからない。これでは読んでいても楽しめませんよね。
でも、ファンタジー小説なんて、正体不明のものばかり出てきますが、「なんとなくこんな感じかな」と想像して楽しめますけどね。あ、もしかしてこの感じが……。
そうです!読書を楽しめない子は、そうやって絵本の文字を頭の中でイメージして再現する力がまだ充分に育っていないんです。だから、本を読んでも物語の世界に入り込めず、つまらないと感じてしまうんですよ。
頭の中の「再現力」ですか。字が読めるようになれば読書が楽しめる、というわけではないんですね!
字が読めるようになったら、読み聞かせは卒業と大人は考えてしまいがち。でも、最初の頃は文字を追うだけで精一杯なので、イメージを膨らませることができないんです。
それだと、文字を読んでいるだけになってしまって、登場人物に共感もできないし、楽しめないですね。
私は物語に入り込みやすいタイプだけど、そうでない子の気持ちがなんとなくわかってきました。
物語に入り込んで読書を楽しむ「再現力」や「共感力」が育つペースは一人ひとり違うんです。だから、まだ読書に挑戦したいという気持ちが湧いていない子には、急かさずあたたかく見守っていきたいですね。

でも、その「再現力」や「共感力」を育むにはどうすればいいんでしょう?絵本から児童文学に移る“橋渡しの時期”の絵本選びのポイントを教えてください。
そうですね。なんといっても、「本好きにさせよう!」と大人が頑張らないことが大切です。大人が頑張ってしまうと、子どもは見抜いて嫌になってしまうもの。自然と物語の世界に入り込める入り口を、ポンとそこに置いてあげる程度がベストなんです。
実は私自身も、下の息子があまり絵本に興味を持ってくれなくて。そこで、何かきっかけになればと思って置いておいたのが、この「こんにちは おてがみです」。
すごい!絵本の中に、本物の手紙が入ってる。
すごいでしょう。福音館のオールスターから、自分宛てに手紙が届く絵本なんですが、「ほら、“ぐりとぐら“からお手紙が届いてる!」と言って誘ってました(笑)。おもちゃ感覚で読めるのがよかったみたいで、このシリーズにはすごくハマっていた覚えがあります。
“ぐりとぐら”や“ばばばあちゃん”から直接手紙をもらった気分になりますね。これはうれしい!
小さい子が自分宛ての手紙を受け取る機会ってなかなかないので、すごく喜んでもらえますよ。
「読みなさい」と“本”を与えるのではなく、“手紙”を置いておく。これなら、自然と「読んでみようかな」となりますね。ほかにも、こういう手紙が届くしかけ絵本はありますか?

それでは、この『ゆかいな ゆうびんやさん』はどうでしょう。自分宛てではなく、おとぎ話のキャラクターへの手紙なのですが、広告チラシやバースデーカードもあり、バラエティ豊かです。
ふむふむ、“シンデレラ”や“赤ずきんちゃん”への手紙なんですね。「3匹のくま」の話は、今までちゃんと読んだことないかも。元ネタのお話を読んでみたくなりました!
そうそう、そんなふうに、この本をきっかけにおとぎ話に興味を持つ子もきっといるはず。
そうやって、子どもが読書へのハードルを下げられるよう、大人がサポートする姿勢が大切なんですね。
まだまだお話を聞きたいところですが、続きはまた次回。引き続き北浦和図書館のお二人に、「絵本から児童文学へ」をテーマに、絵本から児童文学に移る準備期間にぴったりの絵本を紹介していただこうと思っています。お楽しみに!
今回セレクトしていただいた本
 
「こんにちは おてがみです」
出版社:福音館書店(2006年)
価格:1,600円(税別)
「ゆかいなゆうびんやさん」
作・絵:ジャネット&アラン・アルバーグ
訳:佐野 洋子
出版社:文化出版局(1987年)
価格:1,200円(税別)
 

※全てさいたま市の図書館で借りることができます