本をはさんで親子で話そう


Chapter 1「本を読む力」の原点は「本を楽しむ力」
10歳までの読み聞かせが重要といわれる理由についてのお話を中心に、子どもを本嫌いにさせないための、親子の本とのつきあい方についてお話を聞きました。
M村
「本を読む力」を育てるためには10歳までの「読み聞かせ」が大切、という話をよく耳にしますが、10歳までといわれる理由は何でしょう?
子どもの読む力の成長でいうと、本格的に自分の力で読書を楽しめるようになるのは、だいたい小学校の中学年くらいと言われています。
「字が読める=本が読める」と思われがちですが、実は小学校低学年くらいまでは書かれた文字を読むことに集中してしまい、自分の力だけでは十分に物語を広げていくことができません。
「文字が読めること」と、「ストーリーが理解できること」は別ものなんです。そういう意味で、10歳くらいをひとつのターニングポイントと考えられることが多いのかもしれませんね。
Sさん
M村
ということは、文字が読めるようになったからといって、やみくもに本を与えて一人で読ませたのでは、本当の意味での「本を読む力」はつかないということでしょうか?
必ずしもそうとは限りませんが、やはり本というのは子ども自身が「読みたい」「楽しい」と思って読んで初めて、本当の読書の効果が得られるものです。
図書館という立場もありますが、「読解力や理解力の基礎づくり」などとあまり難しく考えず、お子さんが小さいうちは「本の楽しみ方」や「本との付き合い方」を自然に身につけさせてあげてほしいですね。
ところで、M村さん、そもそも「本を読む力」って何だと思います?
Sさん
M村
ええっと、「読解力」とか「理解力」とか、本に書かれている内容をきちんと読みとる力のことでしょうか?
「本を読む力」を「読解力」とするならば、そうなりますね。でもそのためには、頭の中で登場人物やストーリーを思い描く「想像力」が必要です。
一般的に「読書は想像力を育てる」と言われますが、そもそもある程度の想像力を持ち合わせていないと、本って楽しめないんです。どんなに面白い内容でも、イメージの世界を広げられなければ、ただ文字だけを追うだけ。これじゃ面白くないですよね。
Sさん
M村
ということは、(ある程度の想像力がないと)本を読んでも楽しくないから本を読まない。本を読まないから「想像力」が育たない。「想像力」が育たないから本を読まない・・・。あれ?なんかこれって、本が嫌いになるループのような気が・・・・。
ええ、子どもが本嫌いになる典型的なパターンですね。
以前、「読書嫌いが治るような、面白い本はありませんか?」と相談されたことがあるのですが、いくら人気があろうが、お話が面白ろかろうが、本を読む楽しさを知らない子にとっては「親に読まされた本」でしかなく、イヤイヤながらの読書から学べることはほとんどありません。
ですから、子どもが将来良い本と出会い、いろんなことを学べるようになるためには、まず「本の楽しみ方」を親が一緒になって教えてあげることが大切なんです。
Sさん
M村
本を楽しむ基礎があって、はじめて本の楽しさがわかる。
なるほど、「本を読む力」の基礎体力となるのが、「本を楽しむ力」なんですね。でも、「本の楽しみ方」ってどうやって教えたらいいんでしょう?
そうですね、あまり難しく考えず、絵本の「読み聞かせ」など、「親が子どもと一緒になって本を楽しむ」ことから始めましょう。膝の上に乗せるなど、子どもが安心して甘えられる状態で読んであげるのもいいですね。
本の内容よりも「お父さんやお母さんと一緒に本を読む」という楽しい体験を共有することが大事です。「本を読むことは楽しい」というイメージを持たせてあげてください。
Sさん
M村
でも絵本の「読み聞かせ」というと、小さな子どものためのイメージがあって、ある程度大きくなったら、なるべく本を自分で読ませた方が良い気がするんですが、小学校中高学年になってからでも、親が一緒に読んであげた方がいいんでしょうか?
世界には、小さなお子さんから大人まで楽しめる素晴らしい絵本がたくさんあります。そうした作品を選べば、大きくなっても親子で「読み聞かせ」を楽しめると思いますよ。小さな頃に好きだった本を一緒に読みながら楽しかった思い出を共有して、親子の絆を深めるのもいいですね。
ある程度字が読めるようになると、「親が読んであげてばかりだと、自分から読まなくなるから」と、読み聞かせをやめてしまう方がいますが、お子さんが「読んで」と言ってくるうちは、年齢を気にせず、ぜひ読んであげてください。それは、「お母さんやお父さんと一緒に読みたい」というサインなのですから。
Sさん
第1回インタビューを終えて
-
絆アベニュー
編集部員 M村 私自身を含め子どもを持つ親の多くは、「本を読む子」に育てたいと思っているのではないでしょうか。でもだからといって、「小さいうちから良質の本をたくさん与えれば本好きになるか、といえばそうとは限らず、子どもが十分に本を楽しむ力がないうちは、むしろ逆効果になることもある」という話には、ハッとさせられました。
さていよいよ次回からは、今回の話にも登場した「本を楽しむ力」を育てる「10歳までの読み聞かせ」について、子どもの発達や成長に合わせた「読み聞かせ」や本選びのポイントなどをうかがっていきます。どうぞご期待ください!