本をはさんで親子で話そう


Chapter 5おはなし会や図書館の活用で、本の世界を広げよう。
絵がなくても文字だけで楽しめるように、イメージを膨らませる力を育てるには?
本を読む基礎ができてくる小学校低学年頃(10歳前後まで)の読み聞かせについてのお話です。
M村
0歳から始まった、本を読む力を育てるためのお話もいよいよ終盤を迎え、今回は“小学校低学年頃(10歳前後)の読み聞かせ”がテーマ。
漢字も覚え、一人で本が読めるようになると、つい子どもと本との係わりから親が手を引いてしまいがちですが、“字が読める”ようになったからといって、“本が読める”ようになったとは限らない、というのが第1回のお話でしたよね?
はい。ここでいう「本が読める」というのは、「自分の力で読書を楽しむ」ということ。
前にもお話しましたが、本格的に自分の力で読書を楽しめるようになるのは、“小学校の中学年くらいから”と言われています。
小学校低学年でも文章読むことはできますが、実際には文字を追うだけで精一杯で、自分の力だけでは物語を広げていくことができないんです。
Sさん
M村
そこで、読み聞かせなどで親が文章を読む作業を代わってあげることで、子どもは頭の中でイメージをふくらませることに専念できる、と。
確かに、外国映画でも「字幕」より「吹き替え」の方がストーリーに集中できますもんね。そうやって考えると、子どもが文字を読みながらストーリーを追うのがいかに大変か、ちょっとわかる気がします。
「お話を楽しむチカラ」が身につけば、子どもたちはひとりで読書を楽しむようになるもの。
「いつまでも親が読んでいたら、一人で読めなくなるのでは?」などと考えず、お子さんの「読んで」の声に応えてあげていいと思いますよ。
絵本の読み聞かせで育った、「絵を見ながら理解したり想像する力」をバネに、絵がなくても文字だけで楽しめるようにステップアップするのが、この時期なんです。
Sさん
M村
文字だけでお話を楽しむ・・・・・これまで、ずっと絵本のお話だったせいか、ちょっとピンとこないというか。
うーん、最近の子どもは、テレビやマンガのように目で見てわかりやすい絵がないと、お話を楽しめないような気がしてしまうのですが・・・。
確かにそういう傾向はありますね。
でも絵がなくても、言葉によるお話だけで、子どもを夢中にさせることはできるんですよ。M村さん、「ストーリーテリング」、「すばなし」ってご存知ですか?
Sさん
M村
いいえ、初耳です。「ストーリーテリング」ってことは、直訳すると「物語を語る」ですよね?
読み聞かせとは違うのですか?
「ストーリーテリング」は「すばなし」とも呼ばれるもので、「読み聞かせ」と違い、お話を“読む”わけではないんです。
「すばなし」の「す(素)」は「何もない」という意味の「素」。
つまり、“ストーリーを暗記して、何も見ないで話すお話”のことをいいます。1970年頃から図書館の児童サービスのひとつとして取り入れられたもので、「おはなし会」などでは、「すばなし」や「おはなし」といわれることが多いですね。
Sさん
M村
本を読まずに物語を語る・・・
ああ!子ども達が囲炉裏を囲んで、おばあちゃんのこわ~い昔話を聞きながら唾をゴクリ・・・みたいなイメージのアレ(笑)でしょうか?
ええ、アレです(笑)。
そういえば以前、夏の「おはなし会」で数人の職員が交代しながら、怖いお話をしたことがあったんですが、まさにそんな感じでした。最初は、話し手と少し離れて座っていた子ども達が、話が進むたび少しずつ近付いてきて、最後はみんな団子みたいにくっついて、こちらが身動きできない状態に(笑)
Sさん
M村
あはは。よほど怖かったんでしょうねぇ(笑)。
話し手の口調とか、部屋の空気といったライブ感が、お話をより魅力的に感じさせたんでしょう。
そういえば、さっき“「お話を楽しむチカラ」が身につけば、子どもたちはひとりで読書を楽しむようになる”、という話をされましたが、「お話を楽しむチカラ」というのはきっと、こういう体験を通して育っていくんですね。
そうですね。ただ、絵がないということは、自分なりの解釈やイメージをふくらませるチカラ、いわゆる「創造力」が必要になってきます。
文字の読めない小さなお子さんでもお話を聞くことはできますが、お話を楽しむという点では、絵本の読み聞かせなどで「絵を見ながら理解したり想像する力」がついてからの方がいいでしょうね。
Sさん
M村
確かに、「赤い花」という言葉を聞いても、「赤い」や「花」のイメージが思い浮かばないようでは、話が楽しめませんよね。
ということは、今回のテーマ“小学校低学年頃(10歳前後)”にぴったりじゃないですか(笑)!
ええ、小学校低学年でしたら十分楽しめると思いますよ。
私自身もう数えきれないくらいお話を語ってきましたが、お話を聞く子どもたちの目は本当に生き生きとしています。何度も何度も、聞きにくる子もいます。
一人ひとりの子どもと目をあわせ、呼吸をあわせて語る「すばなし」は、「お話の楽しさを体験する良い機会だと思います。「おはなし会」に取り入れている図書館は結構多いと思いますので、興味のある方はお近くの図書館に問い合わせてみてください。
Sさん
M村
語り手ひとりいれば、何もなくても楽しめる「すばなし(ストーリーテリング)」。
いつでもどこでも、たくさんの子どもを楽しませられるのが魅力ですよね。
ところで、これって私でも挑戦できますか?
第5回インタビューを終えて
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絆アベニュー
編集部員 M村 本を読む基礎ができあがってくる小学校低学年頃(10歳頃)は、絵本から本へステップアップしていく転換期。今回ご紹介いただいた、絵をつかわずに語り手と子どもが共にお話を楽しむ「すばなし」は、子どもはもちろん一緒に参加した親御さんも「こんなに面白いなんて!」とお話の魅力に目覚める方が多いのだとか。
無料でしかも質の良い図書館のイベントは、子どものイマジネーションを刺激する良い機会としてどんどん活用したいものですね。
さていよいよ最終回となる次回は、「子ども自身が自ら選ぶ、上手な本とのつきあい方」をテーマに、小学校の中学年以降の「本とのつきあい方」について考えます。
おはなし会
本を使わないおはなし「すばなし」
子どもたちに大人気の「パネルシアター」
さいたま市の図書館では、図書館職員やボランティアによる絵本の読み聞かせや素話(すばなし)を中心とした、子どもたちが物語の世界を語り手と共に楽しむためイベント「おはなし会」を定期的に開催しています。1回のプログラムは30分程度で、参加は無料。自由に参加することができますので、各図書館のイベント情報をご確認の上、直接会場にお越しください。
※詳しい実施日程などについては、さいたま市図書館の各図書館のイベント情報をご参照ください。
今回のお話に登場した絵本
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おはなしのろうそく(1~28以下続刊)
東京子ども図書館編
さし絵:大社玲子
出版社:東京子ども図書館(1973年~)
価格:420円(税込) -
お話のリスト
東京子ども図書館編
出版社:東京子ども図書館(1999年)
価格:1260円(税込)